来日ジャズメンのここだけの話ベスト3 第一位
大スター超有名ギター奏者 ジョージ・ベンソン

これは、約30年前のお話です。当時恵比寿にあった伝説的ジャズライブハウス「ピガピガ」にて、起こった出来事です。

当時のピガピガには、来日ミュージシャンや日本のミュージシャンはもちろん芸能界の方なども大勢がいらっしゃいました。その中でも、超ド級のオーラをまとった方がお二人いました。一人は、ハリウッドの大スター「リーサル・ウェポン」シリーズで有名な「メル・ギブソン」です。圧倒的なオーラで輝いて見えるほどです。サインをもらった厨房のチーフが、「おれ、明日額買ってくるんだ」とはしゃいだほどの彼の周りは非日常空間でした。

もう一人、他を圧倒するほどのオーラで輝いていたのが、今回の栄えある第一位、大スター超有名ギター奏者の「ジョージ・ベンソン」です。

1988年のその日は、早くから店内のボルテージが上がっていました。早くに入店した石川のおやっさん(ピガピガオーナーの有名ドラム奏者、石川晶氏のピガピガでの愛称)もいつも以上に、ニコニコしているように見えました。

「今日は、どうやら公演が終ったベンソンがくるらしい」
店内は嬉しい噂でもちきりです。ベンソン会いたさに、お客さんはもちろん、ミュージシャンも続々と集まってきています。

皆の期待感から溶鉱炉のような熱気と化した店内は、いつもよりビールの売れ行きが飛ぶようになっており、店内は地下のビール工場のような匂いになっています。

「来たぞ、ベンソン」
店長の興奮した声とともに入口の扉が開けられ、そこに店内のスポットを一身に浴びたかのような大スター「ジョージ・ベンソン」の姿がありました。

この1988年当時のジョージ・ベンソンと言えば、それまでにグラミー賞(アメリカの最も権威のある音楽賞)を八回も受賞しており、ジャズ界のみならず、その抜きんでた歌唱力で、ブラックコンテンポラリーの世界でも押しも押されぬ大スター。まさに最高に光り輝いていた頃です。

店内は待望の真打登場に一瞬で水を打ったようになりました。ベンソンはそのまま歌舞伎役者のように花道をまっすぐとカウンターの私のところまで来て、にっこり笑いながら流暢な日本語で言いました。

「サッポロビール、ください」
固まってしまった私。ハッと気づいて、ジョッキを満たし、「エビスですが……」と、おずおずと差し出しました。白い泡が斜めにジョッキを横切ったキンキンのビールを受け取った大スターは、一口ぐっと飲み、「グッド」と言いながら、百万ドルのスターの頬笑みを返して、そのままステージへの人だかりに紛れて行きました。

色めきたった店内は、次に起こるだろうスターとの交流の大演奏会に湧きたっています。でも、ここでちょっとトラブルが起こりました。一緒についてきたマネージャーが、演奏する事は「あいならん」と言いだしたのです。契約上の事か何かわかりませんが、ジョージ・ベンソンを演奏させるわけにはいかないと言いだしたのです。居合わせた皆が一気にしぼんでしまった時に、他ならぬベンソンがこう言いました。

「構わないさ、プレイしようよ」
傍らに立っていた日本人のギタリストの差しだしたギターを手にしたベンソンは、スターのオーラそのままに中央に立ちました。盛大なる拍手の中、ドラムには駆けつけていた有名ドラム奏者の村上・ポンタ・秀一さんが座りました。

準備が出来たベンソンが、バンドの方を見てにっこりと笑いながら、いきなり始めたテーマが、「ソー・ホワット」。超有名トランペット奏者のマイルス・デイビスの曲で、ジャズでは知らない人はいないと言われるスタンダード・チューン(曲)です。

この「ソー・ホワット」は最初のテーマに答える様に、バックが揃って決めのフレーズを入れる形で進行する、いわゆるコール・アンド・レスポンス形式の曲です。この時のベンソンが、電光石火のスピードで弾いたテーマに、あわてた様にドラムのポンタさんをはじめとするバックの面々が必死でついていく姿は、粟立つほどにスリリングな瞬間でした。

それにしても、ベンソンが選んだ曲が「ソー・ホワット」(だから何?)だったのは、空気の読めない無粋なマネージャーへのベンソンからのウィットにとんだ一言だったのかもしれません。

あなたに、お勧めする「ジョージ・ベンソン」のCDはこの二枚です!

「カリフォルニア・コンサート」より五曲目「ソー・ホワット」


カリフォルニア・コンサート

カリフォルニア・コンサート

ここでは同じライブでの「ソー・ホワット」を聴くことができます。テーマの部分は16ビート(フュージョンで多いビート)ですのでちょっと分かりづらいですが、1分37秒からの4ビート(ジャズの基本ビート)になってからがまさにベンソンの独壇場。恵比寿で体験した張り詰めた緊張感が蘇ります。

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「GBコレクション」より十四曲目「ムーディーズ・ムード」


G.B.コレクション

G.B.コレクション

今回のお話にあった1980年代の絶頂期のジョージ・ベンソンといえばこのCD。ベスト盤ですので、どの曲もおススメですが、特に十四曲目の「ムーディーズ・ムード」は1980年にグラミー賞のジャズボーカル部門で受賞した決定版。プロデューサーには前述のクインシー・ジョーンズをむかえ、華々しい雰囲気がゴージャスな名演です。

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番外編 杉本喜代志「アワー・タイム」


アワー・タイム

アワー・タイム

番外編では、今回の記事で登場したドラム奏者のお二人、石川晶さんと村上ポンタ秀一さんのお二人が一枚で聴けるCDをご紹介します。

<「アワ・タイム」より>
1曲目「アワ・タイム」 ドラム 村上ポンタ秀一
3曲目「テイク・マイ・ブルース」 ドラム 石川晶


このCDは1975年にアメリカ修行より帰ってきた杉本喜代志が、久しぶりに気の置けない仲間と当時最先端の音楽を録音したものです。松田優作の探偵物に合いそうなハードボイルドな雰囲気と言ったらよいでしょうか。懐かしいサウンドが今聴くと逆に新鮮なのが驚きです。

リーダーの杉本喜代志はもちろんですが、ドラム奏者の二人とも、タイトにそれでいて熱く熱演しています。

昔話はつきませんが、そろそろお時間のようです。ご紹介したCDも素晴らしいのはもちろんですが、人の記憶というものは美しいものほど色濃く残るようです。ご紹介したCDよりも私の記憶に残った演奏を贔屓しているように感じたら、ご容赦くださいね。皆さんも色々なジャズとの出会いを素晴らしい思い出に変えて行ってください。次の記事でまたお会いしましょう!

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