有名百貨店にも出店する同店、貴重なイートインスペース
外堀通りに面したきれいな外装。お昼時には、入り口暖簾(のれん)の下に、イートインコーナーの営業を表す「地下 お食事処 営業中」の看板が出ています。自動ドアで中へ入ると、1階はいなりやのり巻、押しずしのテイクアウトコーナーです。百貨店の地下などに同店が入っているのをご存じの方もいるかと思いますが、ずらりと並んだ豊富な品ぞろえ……1人でも大人数でも対応できますね。この日は知人と2人、店内で食事の予定なので、左側にある地下へ続く階段を降りていきます。11時半過ぎでしたが、テーブル、カウンターともほぼ席が埋まりかけていましたが、運よくカウンター端の席に腰を落ち着けることができました。
真新しさを感じるこちらのスペースには「新味匠 静智庵」の名前が付いています。メニューは、いなりや巻物のいわゆる“助六”や、押しずしなど、さまざまな組み合わせがあり、迷うくらいあります。知人は初訪問だったことから、“茶巾”入りのセット、「楠」(1030円)をおすすめしました。こちらの内容は、茶巾1つに、鯖1、鮭1、穴子1、太巻1です。
黄色い玉子の見た目が映える茶巾は、あらかじめ2つにカットされています。中身は、海苔やゴマ、レンコンや干ぴょう等を刻んだものが入っていて食感も楽しめます。味付けは甘め。同店名物の1つでしょうか。
一方の私は、茶巾1に海老1、鯛1のセット「杉」(840円)に、押しずし単品で、鮭1、鯖1、穴子1を追加します。同店の押しずしをすべていただくような注文の仕方、ですね。特にお気に入りの押しずしは、鯖と穴子。その姿の美しさは、そのまま丁寧な仕事につながっている印象です。ネタの上に一緒に押された白板昆布も、味わいをより引き立たせています。
ちなみにこちらで食事をする人には、お茶と一緒に豆腐が出てきます。イートインの静智庵の営業時間は11時から14時30分。料金は税抜表示で食べ終わったら伝票を持って、1階のレジにて会計をするスタイルです。
いなりやカッパ巻、改めて感じる伝統の技と味
この日は、知人と2人、肝心の!?“いなり”も“細巻”も食べていないので、帰り際に1階でテイクアウトをすることにしました。私は創業時から評判のいなりと干ぴょう、そしてきゅうり、たくあんの細巻の「四色詰合せ」(840円)をチョイス。夕食前の小腹がすいた時の自分用のお土産ですね。イラストが描かれた包装紙には、“世界の味・日本の代表”の文字が躍っています。ちょっとした手土産にも喜ばれそうなパッケージです。
そして夕方、空腹を待ちきれず!?に包装紙を外し、中身とご対面……細巻の中身の大きさといい、ジューシーさを感じさせるいなりのてかりといい、唾が出てしまうビジュアルです。
甘味のあるいなりは、酢飯に混ぜ込まれたレンコンの歯ごたえがいいアクセントを生んでいます。横に添えられた酸っぱいガリとの相性もいいですね。よくしみ込んだ干ぴょう、ゴマとともに巻かれたきゅうり……同店に関する声などでは、「これまでそれほど関心がなかった干ぴょう巻やかっぱ巻き、その概念が変わった」というような感想、レビューが多々見受けられます。
確かに私自身も同店に出会うまで、いなりやのり巻について、あまり深く考えたことはありませんでした。改めて“気づき”を与えてくれた同店の品々。小さいころから慣れ親しんできた素朴な“王道メニュー”こそ、奇をてらわない伝統の“技”が必要とされるのかも知れません。
100年以上にわたり追及を重ねてきた“いなり”や“のり巻”、押しずしも含めて、食べたいものを選びながらゆっくりと店内でいただく……20世紀スタートとともに歩みを続けてきたすし店で、ランチはいかがでしょうか?
■神田志乃多寿司
住所:東京都千代田区神田淡路町2-2
TEL:03-3255-2525
営業時間:7:30~18:00、イートインの静智庵は、11:00~14:30
定休日:火
地図:Yahoo! 地図情報