第82回作品賞『ハート・ロッカー』
イラク・バグダットを舞台に、爆弾処理班として生きる男たちの死と隣り合わせの人生を描いたキャスリン・ビグロー監督作。アメリカ陸軍の爆弾処理班は、ジェームズ二等兵(ジェレミー・レナー)を新リーダーとして迎える。けれど、慎重さを欠き、爆弾に近づき解除作業をするジェームズに仲間は戸惑いを隠せない……。常に死を意識する爆弾処理班の毎日が描かれ、戦争の狂気があぶりだされる様を生々しい描写で魅せていきます。ビグロー監督の決してブレない力強い演出は見事です。
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、レイフ・ファインズほか
★オスカープチ情報
この年から作品賞候補は5から10に増えました。大本命はジャームズ・キャメロン監督の3D映画『アバター』。キャメロン監督と『ハート・ロッカー』のキャスリン・ビグロー監督は元夫婦で、どっちに軍配が上がるか話題でしたが、元妻の勝利! ビグロー監督は女性初のアカデミー監督賞受賞となりました。
第83回作品賞『英国王のスピーチ』
吃音で悩んでいた英国の国王ジョージ6世が、コンプレックスを克服して、国民のリーダーになるまでを描いたトム・フーパー監督作。昔から吃音に悩んでいた英国王ジョージ5世の次男ジョージ(コリン・ファース)。彼はスピーチ矯正の専門家(ジェフリー・ラッシュ)の風変りな矯正法を実践し、悩み苦しみながらも王としての自信と威厳を身に着けていく……。吃音レッスンのコミカルさと王位継承のプレッシャーに押しつぶされそうになるジョージの苦悩など、硬軟つけた演出はテンポよし!正統派の感動映画です。
監督:トム・フーパー
出演:コリン・ファース、ジェフリー・ラッシュ、ヘレナ・ボナム=カーター、ガイ・ピアースほか
★オスカープチ情報
『英国王のスピーチ』よりも本命と言われていたのは『ソーシャル・ネットワーク』。でも結局、脚色賞、作曲賞、編集賞の三冠。各映画賞の監督賞を軒並み受賞していたデヴィッド・フィンチャー監督も破れました。受賞ならずの理由は「フェイスブック」は若者文化。高齢者の多いアカデミー会員には通用しなかった……そうです。
第84回作品賞『アーティスト』
フランスが古き良きハリウッドを描いた『アーティスト』は、モノクロ映画でサイレントというのが新鮮。多くの映画ファンの心をわしづかみにしました。サイレント映画のスター俳優ジョージ(ジャン・デュジャルダン)は、映画がトーキーへ以降してもサイレントから脱せず人気は下降。しかし、逆に、彼が目をかけていた女優の卵ベビー(ベレニス・ベジョ)はスターになっていき……。ジョージの愛犬アギーの見事な助演ぶりは必見!フランスからハリウッドへのラブレターのような愛すべき作品です。
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマンほか
★オスカープチ情報
『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』で主演女優賞を受賞したメリル・ストリープは、ノミネート回数は17回と史上最多を誇り、今回の受賞は29年ぶり!また『アーティスト』に出演していた犬のアギーは、犬のアカデミー賞とも言われるゴールデン・カラー(Golden Collar)賞を受賞。アカデミー賞授賞式でも愛嬌を振りまいて場をさらっていました。
アカデミー賞授賞式は2月25日(日本時間)。WOWOWで午前9時から中継が始まります。レッドカーペットでスターの姿も見れるし、ショーアップされたステージは楽しいこと必至!お時間ある方はぜひ!