輸入車の“脱ガイシャ”感覚
輸入車は特別なクルマ、という日本人に特有の“ガイシャ”感覚からの脱却がトレンドになってくると思われます。その昔、まだアメリカ車が巨体を誇っていたころ、日本人のガイシャ感は生まれました。“大きなクルマ”という要素こそ削ぎ落とされてきましたけれども、いろんな意味でまだまだ“高く”、サービスも国産車に比べて悪いというイメージが、いまだに色濃く残っています。特に、地方都市では当時のステレオタイプ的な輸入車への見方が根強い。
それでもまだ、輸入車信奉者がそこそこ多いうちは良かったのですが、ここにきて、積極的にガイシャを購入する層の平均年齢も上がり、けれども輸入車を志向する若年層は見当たらず、という、自動車業界全体が抱える課題をさらに凝縮した厳しい未来絵図を輸入車業界は描かざるをえない状況に陥りました。
2013年の今年、その抜本的な対策として、“小さな輸入車”をもっと広めようという動きが、例えばフォルクスワーゲンのように元々垣根の低かったブランドのみならず、メルセデスベンツやBMWといったプレミアムラグジュアリィブランドにも大いに見られることでしょう。昨今のダウンサイジングトレンドともうまく噛み合って、今こそ自社ユーザーの裾野をイッキに拡げておこう、というわけです。
輸入車にとって今がチャンスだと思う背景には、国産車の性能やデザインの劣化が著しいという現実があります。性能やデザインのみならず、グレードの種類まで輸入車の方が充実している、という逆転現象さえ珍しくありません。
昨年デビューしたフォルクスワーゲン up!は、これまでの常識を覆して、地方都市でも大変な人気を得たそうです。その最大の理由はといえば、エコ性能や安全性能もさることながら、デザインだったといいます。
日本のコンパクトカーの、あのいかにも安っぽいデザインに、そもそも舌の肥えた日本のユーザーはとうとう我慢しきれなくなってきた。燃費性能や安全性能といったいまどき必須のパフォーマンスにも優れたデザインのいい輸入車にとって、マーケットを拡大する今が本当のチャンスかも知れない。少なくとも、コンパクトカーをそのラインナップに保有するブランドは、そう考えているはずです。
そこでは、もはや、国産車対輸入車という、旧来の単純な対決構造は必要ありません。脱ガイシャ感覚のさまざまなマーケティング戦略が展開され、ユーザーの意識も徐々に変わっていくことでしょう。