Mスポーツ以上、Mモデル以下
1シリーズのMモデルに乗ってみたい。先代のMクーペが発表されたとき、その願いが叶えられるかと思ったが、残念ながら日本市場への正規導入がなかった。BMWファンのみならず、ほどよいサイズの楽しいFRスポーツカーを好む多くのクルマ好きが落胆したものだ。しかし。現行型1シリーズベースの、ホットなモデルが、ついに日本上陸を果たした。その名も、M135i。M パフォーマンス・オートモビルズ(MPA)というMが指揮する新たなシリーズからのデビューである。
ちょっとややこしいのだけれども、説明しておこう。Mパフォーマンスとは、Mモデル(M3やM5など)と通常シリーズにおけるMスポーツパッケージとの間を埋めるべく、新たに企画されたスポーツモデルレンジである。
ヨーロッパではまず、M550dやX5 M50dといった“ディーゼルのM”という新機軸をこのMPAから始めており、早くも非常に注目されるシリーズとなった。M135iはMPA初のガソリンエンジン搭載車、である。
なんだ、Mじゃないのか、なんちゃってMか、と見くびるなかれ。簡単にいっておくと、オリジナル設計の専用パワートレインではなく、既存エンジン&ミッションをベースにMがチューニングしたパワートレインを載せてコストを抑えつつ、けれども高出力エンジンと徹底したシャシーチューニングによって、ノーマルラインナップとはひと味もふた味も違う1シリーズを実現した、のだ。
事実、そのエンジンパフォーマンスは、世界限定販売された先代1シリーズのMクーペとほぼ同等、馬力が少し抑えられた程度である。
日本仕様は5ドア&8ATのみ。リーズナブルな価格設定が期待された6MT仕様や、筆者が先んじてミュンヘンで試乗したマッチョで美しい3ドア仕様の導入こそ見送られたものの、クルマそのもののパフォーマンスの高さは、5ドアでもさほど変わらない。嬉しいことに、価格も先代のノーマルラインナップ135並に抑えられた。このあたりのコストパフォーマンスの高さが、MPAの魅力である。