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#037 日本美を世界に伝えた最初の椅子(2ページ目)

UP#037:しなやかに、軽やかに舞う椅子。日本工業デザイナーの先駆者:柳宗理氏デザインのバタフライ・スツールは、日本の美を世界に伝えた最初の椅子なのである。

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

『バタフライ・スツール』、ジョイントディテールの魅力



まるで手首から広げた腕を左右対象に合わせて、金具で止めた簡単な構造。
しかしながら、その細部は実に計算されたデザインとなっている。まずは、その結合部分である。

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厚さ6.5mmの同形成型合板二枚を合わせ、座面のすぐ下で2本(黒色)のボルトナットで止めいている。左右シンメトリーな意匠が緊張感を際立たせている。

 


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座面下と脚部では、その結合部分が対照的である。合板に溶け込むようにあくまでも薄く目立たない座面下に比べて、脚部は象徴的だ。緩やかに3次曲面を描く2対の脚部を一本の真鍮ロッド(パイプ)で結んでいる。上からの自重に対して、座面下……いわば首元を支点にすると脚部は横に広がろうとする。その横の広がりを阻止する為にど真ん中にあるロッドが効いている。

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緩やかに描いた脚部の先端は床に点で接する……四本脚と同じ原理。その横に広がろうとする力を中央の真鍮ロッドが阻止している。ロッドの端部を平らにして、脚部(脚板)の外側からビスで止めている。このディテールはかなり割り切ったモノである。

 


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『バタフライスツール』……実際に座ってみる。



厚さ6.5mmの成型合板がお尻に馴染んで心地よい。とくに前後の下へのくびれと左右の上へのくびれが、実にいい。商品オプションとしてカラフルなクッション(薄い座布団)が用意されているが、ボクには不要だ。充分身体にフィットして気にならないから………冬場の寒い時などは有効だが。。。座高:350mmもいい。通常の椅子、スツールのそれは400~450mmほどあるが、この低さが背筋を伸ばし、身体にも有効なのである。

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一枚の板がうねるように構成され造形されている。何度も何度も形作られたものであろう………単なる計算ではなく、削っては貼り、貼っては削り、まさに手作業の造形である。だからこそ、自然と身体になじむ。作者の気遣いが身体に馴染んでくる。

 


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恒例のひっくり返しシーンである。
この裏返しは、とても大切なものが見えてくる。見えない所まで手を抜いていないか、どうか?………コンな所に! と思わずうなってしまうことがあるからだ。
で、このスツール。やはり、一本の真鍮ロッドが効いている。とくにロッドの先端部のディテールが簡素でいい……割り切りがいいのである。それと脚部の先端が椅子本体に対して、接する床に対しても傷付くことのないよう、緩やかにカーブし、アールをとっている。繊細な心遣いが、椅子の裏側に見えてくる。

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本当に大丈夫って?言いたくなるような細い一本のロッド。同様に6.5mmの薄さも……3次曲面を描くことによって強度を増している。中央には、成型合板技術で有名な天童木工のブランドシールがみえる。

 


(写真をクリックすると、画像が拡大されます。)

最後に、次ページにてスツールのデーターをご紹介しよう!
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