当初はデパートで住宅が売られていた?
松村教授が講演したのは「プレハブ住宅のこれまでの50年の歩みと今後の展望」。なかなか50年の歴史を語れる方は少なく、消費者の方が直接このような先生から話を聞く機会も少ないと思うので、ここでAllAbout読者にシェアしたいと思います。ハウスメーカー各社の第一号住宅。ダイワハウス「ミゼットハウス」、積水「A型」、パナホーム「松下一合型」など。(松村教授のスライド資料から)
一番最初は写真のようなプレハブによる離れ小屋のようなもので、子どもの勉強部屋などに使われていたようです(贅沢ですね!)。当時の生産体制はまだ大手メーカーでも町工場規模でしかなく、デパートで住宅が売られていたとか。
1970年代から各ハウスメーカーは大企業化・生産大規模化し、工場で事前に組み立てて現場に運ぶ生産体制プレファブリケーション化も進みました。1970年代は2度にわたるオイルショックが起き、環境問題が叫ばれ始め、住宅の省エネルギー化の技術開発も進められた頃です。
そして1980年代のバブル繁栄期。住宅は「技術・性能・ハード」に「ソフト提案」を加えてパッケージ化された「商品」として開発されるようになります。住宅を「商品」と呼ぶようになった初めはこの頃です。それまで開発部はもっぱら技術開発部であり、商品開発という概念もありませんでした。2×4工法がオープン化され、企画型(規格型)商品という概念も生まれてきました。
今も生きる30年前の提言
米の量産型住宅シティでは住人が誇りをもち博物館までできている(松村教授のスライド資料より)
たとえば、「設計の商品化の時代へ」「豊かさ、個性、オリジナリティ」「箱の産業から場の産業へ」「モノからサービスへ」「郊外型から都市・地方型へ」など、30年前とは思えないほど今にもつながる、実に示唆深い提言をしています。このあたりは、現在もまだ開拓していく余地はあるのではないでしょうか。特に「個性・オリジナリティ」が薄れてきている今、再度考えてみる価値はありそうです。
さらに30年前に「生活に関する研究が必要」とも説いています。この生活は「人間と空間との関係」であり「暮らし方」であり、日本の住宅産業が世界に誇れる独自の知的財産でもある、とも。新しい半世紀に突入するであろう住宅産業の今後に期待したいと思います。