老舗を感じる“和”の内外装、海外からの観光客の姿も
趣きのある店頭、そして暖簾をくぐると、これまた重厚かつ歴史を感じる空間が広がります。1階にも席はありますが、2階がメインという造りでしょうか。夏の日差しが強かったこの日は、2階へと通されます。2階には大小さまざまな椅子席に加え、畳のお座敷も。入る前には想像できないくらい広く、全容把握がちょっと難しそうな空間です。開店間もない時間で席を選べそうだったので、“お座敷”へと上がらせていただきました。
数あるメニューの中から、直感を頼りに「京野菜せいろ」(1050円)をオーダー。4月から10月までの期間限定メニューです。店員さんからは「天ぷらではなく、冷たい汁の中に野菜が入っている」という説明を受けます。
運ばれてきたそばの見た目は、東京の老舗店とそれほど大きく変わらないようですね。そば猪口にはあらかじめ、細かく切られたキュウリ、ミョウガ、ナスとシソが入っています。こちらに汁を投入……つけ汁に具材が入っているパターンは、鴨や鳥(かしわ)など、温かい汁が基本ですが、こちらは冷たい汁です。そばは長く、しっかりと角があります。京野菜で冷たいつけ汁、暑い日に非常にマッチした内容でした。
その数か月後、冬に訪れた際には、そば店の定番「鴨せいろ」(1680円)をオーダーします。今度は温かいつけ汁です。北海道利尻産の昆布と、目近、うるめ、鯖節を調合して取った京風ダシ……いい塩梅です。
周囲を見渡すと、着物姿の外国人観光客と思われる一団も。国際観光都市・京都ならではです。日本を代表する老舗店、そんなフレーズが海外用パンフレットに書いてあるのでしょうか……器用に箸を使って少しぎこちない音を立てながら“そばをすすって”います(笑)。たった一杯のそばも、店内の内装、来店客が醸し出す雰囲気一つで、印象もガラリと変わりますね。
5回食べ方を楽しめる、名物「宝来そば」
先日、知人と2人で同店を訪れる機会がありました。この日は2階のテーブル席で、京風味「利休麩」(630円)をつまみにちょっとビールを飲み、そば〆というテンションが上がる流れです。そばのオーダーは、知人は同店名物の「宝来そば」(2100円)を、わたしが「天せいろ」(1575円)をチョイスしました。
私も過去に食べたことがある「宝来そば」は、5段重ねになっている京漆器に盛り分けられたそばと、錦糸卵、シイタケ、大根おろし、九条ねぎ、エビ天、のり、ごまなど、京風に趣向をこらした多種の薬味の器が提供されます。
食べ方は、一段ごとに、どの薬味をどの程度……など本人のお任せです。子どもはもちろん、大人も楽しみながら食べられます。
天せいろは、海老天2尾に野菜天が付いたオーソドックスなタイプです。奇をてらわず、王道の一品ですね。
メニューの豊富さに加え、伝統だけにとらわれず、チャレンジを感じる一品なども目を引く同店。何度も訪問して、いろいろ試してみたい……そんな感情が湧きあがってきました。
食事を終え、帰り際にレジにて1つ確認をします。「こちらよりも古い歴史のある飲食店ってあるのでしょうか……」こちらの肩書を明かさずのいきなりの質問です。
回答は、「(某)神社の入り口付近に、あぶり餅のお店がある」とのこと。いわゆる、甘味処です。ランチができる飲食店、という意味合いからすると、私の中では除外ですね。
食事ができる、ということで言うとやはりこちらでしょうか?と再び尋ねると、“そうですね”とのひとことをいただきました。(ありがとうございます)
“そうだ、京都へ行こう”ではないですが、飛行機や新幹線に乗って、「そうだ、京都の尾張屋へ行こう」というのも決して大げさではない日本最古の老舗飲食店で、ランチはいかがでしょう?
■本家尾張屋 本店
住所:京都府京都市中京区車屋町通二条下る仁王門突抜町322
TEL:075-231-3446
営業時間:11:00~19:00(蕎麦処)
定休日:1月1、2日
地図:Yahoo! 地図