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「理想の子ども室」大人と子どもでこんなに違う?(2ページ目)

スウェーデン発世界最大級のホームファニッシングカンパニー イケアの日本法人「イケア・ジャパン」は、東京電機大学、日本大学理工学部、芝浦工業大学の3大学と、産学連携による「子ども室プロジェクト共同研究」を2010年9月より推進、このほど途中経過報告会を開催しました。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

パパの書斎と子ども室は物置部屋に。。。

イラスト

訪問調査した家庭のモノをイラストで紹介

確かにこの子ども室を取り巻く時代の変化はガイドも大いに共感しますし、「ハコ」でなく「スタイルの具現化」という意味での住まいの選択では、すでに出来上がっている集合住宅やマンション、分譲建売よりも注文戸建のほうが反映しやすいのかもしれないという感想をもちました。

次に報告した芝浦工大工学部の清水郁郎准教授は、小学生の子どものいる集合住宅居住者13家族を訪問調査(世帯構成人数平均4人)。小学生時代は子ども室があってもランドセルやかばんを置く程度で、ほとんどはリビングやダイニングで勉強や遊びの時間を過ごしている共通項を見出しました。

また「パパの書斎」があっても、パパもほとんどはLDなどで過ごし、結果、書斎も子ども部屋も物置部屋になる傾向も。ちなみに「ママの部屋」はすべての家庭でなかったそうです。こうしたことから当然ながら家じゅうのモノがLDに集まることになり、マンションなど限られた空間と多すぎるモノの不均衡、収納不足などの課題を挙げました。

大人が考える子ども室は「規律」
子どもが考える子ども室は「自由」

大人

大人が考える子ども室。家具がすべて壁際に並んでいる

最後に報告した東京電機大理工学部の勝又洋子教授は、「子ども室を含めた現代の居住空間は、本当に子ども目線でデザインされてきたのだろうか? 結局は大人が考えた空間を押し付けていないだろうか」という疑問を仮説にもち、小学生の親子を対象にインタビューとワークショップを行いました。

すると、大人が考える子ども室は「勉強」「就寝」を中心に空間を考え、勉強机と書棚、ベッドを窓際にコの字で隅に寄せる傾向が多いのですが、子どもの考える子ども室はもっと自由。勉強に疲れたらごろんと寝転がれるよう勉強机とベッドをくっつけたり、友達や兄弟で遊ぶために大きなローテーブルを部屋の真ん中に置いたり、自分の身丈やスタイルに合わせた配置を希望する特徴が見えてきたそうです。

子ども

子どもが考える子ども室。テーブルが真ん中にある

また通常、平均的な6畳の子ども室は、小学生低学年にとっては体がまだ小さいため広すぎて落ち着かないという傾向も見え始めたといいます。またワークショップで子どもたち自身が好んで創り上げた部屋と、親が理想とする部屋とで子どもの落ち着き度や集中度を比較したところ、子どもたち自身でつくった部屋のほうが落ち着き度や集中度が高い様子もわかりました。

「私たち大人や親、住宅業界関係者は自分たちが子どもの頃に持っていた感覚をどうしても忘れてしまい、これが子どもが落ち着く理想の勉強部屋であると押し付けてしまいがち」と勝又教授。

子どもの人格を尊重し、子どもの目線を重ねることで、もっと自由で落ち着いて集中度も高まる自由な子ども室・「子どもにとってやさしく快適な環境づくり」が見えてくるのかもしれません。大変興味深い報告でした。
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