人は「安定」と「刺激」を求める
私はもう一生、トキメキとは無縁なの?
震災当日、配偶者や恋人に連絡を取り合う同僚を見て、「自分には、そういう対象すらいない」と愕然としたと話す友人がいました。恋人がおらず孤独を感じている時は、たった一人の信頼できるパートナーがいれば、どんなに心強いこと思うでしょう。しかし、一度安定した関係を手に入れた後は、エミさんのようにもう1つの欲求が、じわりじわりと顔を出すことがあります。
人には、「特定のパートナーとの関係や絆を深めたい」と安定を求める気持ちと、「特定または不特定多数のエロスを感じる相手と交わりたい」と刺激を求めようとする一見相反する欲望が存在します。一人もいないのはイヤだけど、完全に二人だけの関係で閉じられてしまうのもつまらない。傍から見れば、わがままで贅沢な欲望です。でも、これも多くの人にとっての本音かもしれません。
配偶者や交際相手以外にエロスや恋愛感情を抱くことについては、「結婚しても恋愛したい?既婚女性の浮気の実態」でも書いたように、法律や常識や戒律で規制したり、本人の我慢や忍耐で自制したりして、欲望そのものは抑えることはできても消すことはできません。特定の恋人やパートナーの有無に限らず、魅力的な対象に出会えば性衝動を抱くのは、生物として自然なことです。自分の欲望を抑圧していると、欲望を実現している人を妬んだり、強く非難したくなるものです。一方、行動するか否かは別にしても、自分の欲求を自覚すると、人の欲望にも寛容になりやすいものです。本音と建て前では、世間一般とは、違うものになることも多いでしょう。