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「挑戦」の哲学をもつ木の椅子(前編)(2ページ目)

UP#042:リートフェルトの生涯で最初の量産化椅子。今回は、極めてミニマムな木製の椅子、「ジグザグ・チェア」の登場。木の椅子の逸品です。

石川 尚

執筆者:石川 尚

ファニチャーガイド

この椅子の名の所以、ジグザグサイドビュー


LEM





サイドビューは、脚と座と背が折り重ね連ねて描かれたZのフォルムが美しい。
(写真をクリックすると拡大されます。)


サイドビューのフォルムは『ZIGZAGジグザグ』の所以である。座ることを拒否するかのようなエッジの効いたシャープなラインは現在でもアバンギャルドな存在だ。とても木材の椅子とは思えない。
椅子の構造は、かなりムチャというか挑戦的である。上からの荷重で下(脚)の部分がつぶれてしまうような不安定さがあるから、勢いよく座面に腰を下ろす気にはなれない。かといって、荷重を支える支持部材が入ってしまうとフォルムが崩れてしまう。
しかし、この不安定さを構造上成り立たせている秘密がココにある。


LEM





ピンク色の部分に三角形の楔(クザビ)が見える。このクサビ、上下2カ所にあるのだが、そんなに目立たない。しかし、これが構造上、キいている要の楔なのだ。
(写真をクリックすると楔部分が拡大されます。)


この楔(クサビ)、1930年代の オリジナルでもこの位置にある。現在商品となっている椅子と違いは、この楔のジョイント。製作当初は楔と座面+脚の端部をボルトで痛ましく貫通し固定している。
現在では、ボルトのかわりに接着材とダボ(円柱形の木片)を使用して固定している。これが、人を支える構造の要となっていることに驚く。


同じ流れの中に納まったフォルム


次に真上から見た。(これは平面図。)
LEM




下部が座面前部。座面前部から背にむけて絞っている。この絞った流れが座面、脚、背と同じ方向の流れの中に納めている。
(写真をクリックすると拡大されます。)


奥行390mm、前幅370mm、後幅330mmの座面。前方から後方へ絞りは、椅子に方向性を保たせ、とても美しい。
次に椅子をひっくりかえして、下側から見てみる。
真上から見た時よりもっと同じ流れの中に全てのパーツ(底、脚、座、背の4枚の板)が納まっているのがわかる。


LEM

底板前幅310mm、後幅330mm、奥行380mm。
座面同様のバランスで後方へ絞っている。(写真をクリックすると拡大されます。)

次ページにて椅子のデーターをご紹介しておこう。
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