石川尚のスケッチコラム「椅子のある風景」#21
ナチュラルカラーのアリンコチェアに腰かけて
どこにいても、「何気なくある椅子」が気になる。そして、その場所、空間の一部になりきっている風景がそこにある。
早朝の上野の森を抜け、取材の為に出向いた東京藝術大学美術館。
展覧会開場には未だ時間があり、人もまばらだ。
大学生らしい数人が美術館裏手へ向かうので後をつけてみると、なんとそこは多くのテーブルと椅子整然とある食堂、つまり学生食堂だった。
「わ~ッ、懐かしぃ!」……筆者は芸大出身ではないが、同様の美大生の時に何度か潜り込んだことがある。云十年もむかしのことだが、当時の学食はこんなに美しい空間ではなかったな。
かなり早い時間なので、食堂の中はガラ~ン。
とりあえず、食堂椅子に腰掛ける。
椅子は、美術館など公共施設に多用されているヤコブセンのアリンコチェア(色は、ナチュラルとブラック)
愛用のカメラと手帳を白いテーブルの上に置き、これから始まる取材予定をメモをめくりながら確認する………いつもの流儀だ。