「デカ長!、ありました!」 まるで警察の手入れみたい。。。
整理中で雑然としたお部屋の中には、椅子5脚とタイニングテーブル。
内、ハンス・ヴェグナーの年代物(40年ほど前かな…と卓氏)2脚。それ以外はすベて水之江氏デザインによるもの。
特に代表作のダイニングチェアは、何度も何度も試作をおこない商品化までに試作100脚はくだらないという伝説の椅子だ。
(写真をクリックすると、並列したディテールの異なる2脚のダイニングチェアが拡大されます。)
これで、実物展示の椅子は完璧! あとは、図面、スケッチだが、、Kさん、見つかりませんねぇ。 「ウ~ん、前回お話伺った時のスケッチ・図面があるはずなんですが、、、」「デカ長!あっ!コレ、コレ!これは?」……まるで警察の手入れのような雰囲気。
(写真をクリックすると、水之江さんの貴重な原寸青焼き図面が拡大されます。)
最近ではあまりお目にかかれないが原寸図面……1/1で描いた図面、筆者は今でも椅子制作の時はかならず描く……とが見つかる度に、嬉しくなってくる。そして、じっくりその図面の読み取る瞬間がたまらい。
それにしても、美しいきれいな図面だ。
今から焼く30年前のモノとは思えない。通常、トレーシングペーパーに鉛筆で図面を描くと手のハラでこすったりして原図が汚れるもの。下図を描いてその上に再度トレーシングペーパーをおいて描くような作業を繰り返さないとこんなにきれいな図面は描けない。おそらく、水之江氏はその様な工夫をされて描いたのだろう。そして図面のタッチも筆跡も神経質にきれいに整理されている。ディテール(詳細)を数ミリ単位で検討し、試作を重ねたと聞くダイニングチェア………まさにディテール整理の鬼である。
(写真をクリックすると、その部分が拡大されます。)
『デザイン、ポイント』 ☆加工技術は、メーカ特性を生かす。 1)便利、安全、ノークレーム 2)必要なものと不必要なものに対する省略と合理化してコスト低減。 3)空間性格の演出力とイスの調和を計る 水之江忠臣 図面の言葉に感銘する。 製作所に渡す製作図面に描かれた言葉からモノつくりの本質と合理的な椅子の思考だけではなく、いかに空間を意識したのかというデザイナーの視点が見えてくる。 一応お目当てのものは発見できたのでまた日をあらためて資料をお借りすることにしてマンションを後にした。 後3ヶ月後にはお住まいを処分されるとお話の卓氏。寸前のところで処分されるはずの貴重な資料を発見できることができた。あらためて今回の(社)日本インテリアデザイー協会創立50周年記念事業の意味を感じる、水之江忠臣氏の作品探し。 「先人が残された大切なもの、、これはデザイン業界の財産」を合い言葉にさて、次回『ザ・仕事の現場』Part4 第3話はどんな展開に・・・お楽しみに! …………………………………………………………………………………………… ■水之江忠臣(Tadaomi Mizunoe) 1921-1977 ・1921年、大分県生まれ。 1942年、前川国男建築設計事務所に入所。産業工芸試験所の意匠部長:剣持勇、同所機能研究室長、豊口克平の指導を受けながら機能的な家具を追求。1964年、ハーマンミラー社相談役となる。 ■ 今回の関連リンク
・『ザ・仕事の現場』Part4→
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