なぜ東大?合格実績のヒミツ
さて、中学受験に限らず、高校受験においても、志望校を選ぶ基準の一つとして、よく東大の合格者数があげられます。それはなぜなのでしょうか。もちろん、東大が日本の最高学府であることも関係しています。しかし、ヒミツは他にもあります。まず、東大の入試問題は、本当の学力を測る良問が多く、決してスパルタ式、詰め込み式の勉強だけで太刀打ちできるような問題ではありません。実際、東大に多くの合格者を出している中学・高校の多くは、生徒の自立性や主体性を重視したり、小手先の受験テクニックではない学問の本質を重視した指導を心がけていたりしています。その成果が、東大の合格実績に現れるのです。おおた氏も本書でそのことについて触れています。
私、ガイドがもう一つ付け加えるとすると、東大をはじめとする難関大学の合格実績を増やそうとするあまり、地域のトップ校に追いつけ追い越せと躍起になっている「いわゆる二番手校」こそ、詰め込み式の受験指導に徹している学校が多いのが現状です。ですから、単純に東大以外の難関大学の合格実績が高いからと言って、その学校が良い指導をしているかどうかまではわからないのです。こうした点からも、東大の合格実績に注目が集まるのです。
親としてできること
親としてできること、心のこもったお弁当を作ってやったり、時には励まし時には息抜きをさせてやったりすること
そんな中、公立の中学校がダメだから中学受験という後ろ向きな姿勢ではなく、中学受験を一つのきっかけとして、子どもだけでなく親も成長する良い機会ととらえることはとても大切なことです。これは、おおた氏が「中学受験という経験の途中で、先に心が折れてしまうのは、子どもではなく親のほうであることが多いのではないかと私は思う」と指摘していることからも読みとれます。
ですから、中学受験親としてできることは、目先の偏差値や合格可能性といった数字にとらわれず、子どもの成長を見守ることや子どもが志望校合格という目標に向かって集中できる環境を整える後方支援だと言えます。具体的には、心のこもったお弁当を作ってやったり、時には励まし時には息抜きをさせてやったりすることです。そして、そこには親として成長することも含まれます。本書でも、コーチングについて触れられていますが、親がコーチングや発達心理学の本に目を通すことも、立派な後方支援と言えるでしょう。
本書は、第一志望に合格することだけが中学受験の成功や目標であるわけではない、そんなことに気づかせてくれる良いきっかけとなるかもしれません。
おおたとしまさ著「中学受験という選択(日経プレミアシリーズ)」