後縦靭帯骨化症とは

脊椎の構成要素である椎体の後方にある後縦靭帯という繊維性の組織が骨化し、肥厚し硬くなることで、脊髄を圧迫する病気です。
骨化

後縦靭帯が骨化し肥厚すると脊髄を前方から圧迫します。


日本人男性の4%、女性の2%で罹患するといわれていますが、アメリカ人では0.1%と非常にまれな疾患です。ただし日本でも正しく診断され治療をうけている患者さんの数は少ないため、厚生労働省の難病に指定されている疾患の一つです。


以下の記事は実際の患者さん(37歳・男性・Aさん)のケースを元に、その体験を加工して記載してあります。Aさんは後縦靭帯骨化症を発症しました。後縦靭帯骨化症の症状、診断、治療などの理解を深めて下さい。

後縦靭帯骨化症の症状

Aさんに2009年1月両手、両足の痛み、しびれ、筋力低下、細かい手の作業が難しくなる症状が出現しました。この経験はいままでなかったので近くにある整形外科のクリニックを受診しました。

またAさんに見られなかった症状として、首の可動性の減少、肩こり、頚部の痛みなどがあります。

後縦靭帯骨化症の診断

■単純X線(レントゲン)
2009年1月にAさんがクリニックで撮影した単純X線写真です。

頚椎単純X線の側面像

             頚椎単純X線の側面像。



単純X線写真は放射線被爆量も少なく、費用もわずか。その場で撮影も終了し当日説明をうけられるので、整形外科では必ず施行します。

頚椎は7個、体の中央にあります。頭側は頭蓋骨と関節でつながり、足の方向では胸椎とつながっています。横から見ているので四角い形で見えているのが椎体です。椎体の後方が骨化しているようにもみえますが、明らかに異常の所見ではありません。

次にMRI撮影の予約、投薬(鎮痛剤、胃薬)、リハビリの牽引の指示が出ました。費用は初診、3割負担の健康保険で3,000円ほどでした。

■MRI
MRIは専用の病院で撮影を行いました。
MRI

        MRI写真。頚部脊椎が前方から圧迫されています。


MRIは磁気を使用して人体の断面写真を作成する医療用機器です。被爆がないのが最大の特徴です。欠点は費用が約1万円程度と高額な点、狭い部屋に15分間ほど閉じ込められて、騒音が強いことです。脳外科の術後で体内に金属が残っている人、心臓ペースメーカー装着の人、閉所恐怖症の人などではMRI検査が無理なため、CTで検査を行います。CTはMRIより費用は5,000円程度と安くなりますが、被爆があります。

このMRIでは第4頚椎第5頚椎間、第5頚椎第6頚椎間で脊髄が前方から圧迫されている所見です。この時点では頚髄症、頚椎ヘルニアなどの可能性が高いと診断されました。

そのため専門的治療を考慮して、クリニックの紹介で総合病院の整形外科外来を受診しました。

■CT
脊髄はMRIの方が診断能力が高いのですが、骨化した後縦靭帯を診断するにはCTの方が有用です。総合病院では頚部のCTを施行しました。
 CT

       頚部CT像。第5頚椎で後縦靭帯が骨化していることがわかります。

CTで初めて後縦靭帯骨化症の診断がつきました。大きな骨化部位は第5頚椎の1ヵ所です。後縦靭帯骨化症と頚髄症の合併と診断されました。


後縦靭帯骨化症の治療

■安静
後縦靭帯骨化症の症状は、突然の疼痛とその後の著明な疼痛の軽減ないし完全な消失が特徴。あわてて治療を進めるのではなく、我慢できる範囲の疼痛などであれば安静にして経過をみるのも一つの選択です。

■鎮痛薬
ボルタレン、ロキソニンなど非ステロイド消炎鎮痛薬(NSAIDと省略されます)を用います。

・ボルタレン…1錠15.3円で1日3回食後に服用。副作用は胃部不快感、浮腫、発疹、ショック、消化管潰瘍、再生不良性貧血、皮膚粘膜眼症候群、急性腎不全、ネフローゼ、重症喘息発作(アスピリン喘息)、間質性肺炎、うっ血性心不全、心筋梗塞、無菌性髄膜炎、肝障害、ライ症候群など重症な脳障害、横紋筋融解症、脳血管障害胃炎。

・ロキソニン…1錠22.3円で1日3回食後に服用。副作用はボルタレンと同様。

どちらの薬でも胃潰瘍を合併することがありますので、胃薬、抗潰瘍薬などと一緒に処方されます。5年間、10年間の長期服用で腎機能低下などの副作用がありますので、注意が必要。まれに血液透析が必要となる場合もあるので、漫然と長期投与を受けることはできる限り避けて下さい。


■神経再生薬
・メチコバール ビタミンB12…障害された神経の修復を促進させる作用を持ちます。1錠21.1円を1日3回服用します。後発薬では5.6円のものが複数あります。4週間の服用で64%の改善率があります。副作用ですが、食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、発疹などがあります。

■リハビリ
ヘルニアでは牽引のリハビリが有効です。Aさんは週3回の通院を1ヶ月間行いました。多少の改善は認めましたが、筋力低下は消失することはなく、日常生活の不便さは解消しませんでした。


■後方法
神経に対する圧迫を除去するために、骨成分である脊椎の椎弓と呼ばれる部位を切除する手術です。人体の後方からアプローチします。

後方法

後方法では椎弓を切除します。



■前方法
後縦靭帯骨化症が広範囲でない場合、前方からの手術を行う場合があります。Aさんの場合、第5頚椎単独ですので前方法が選択されました。
前方固定術の術後単純X線像

             前方固定術の術後単純X線像。


Aさんの場合、第5椎体、椎間板を切除し、腸骨移植とプレート固定(チタン製の金属の板)を行いました。手術時間3時間半、術後の経過も良好で入院20日間で退院となりました。健康保険を使用し3割負担で45万円の費用でした。高額医療のため2ヵ月後に33万円が健康保険の組合から還付されました。
退院した時点で両手の筋力が増して、細かい運動が可能となりました。術後の痛みもそれほど強くなくAさんは満足しています。

後縦靭帯骨化症のまとめ

Aさんの場合、初期の後縦靭帯骨化症の段階で診断がつきました。進行してから発見された場合、手術治療を行っても回復が思わしくないことも多いので、早期発見が大切な疾患の一つです。なるべく早く整形外科専門医の受診をお勧めします。


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