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上野・国立科学博物館で「チョコレート展」開催(4ページ目)

上野の国立科学博物館で2012年11月3日(土・祝)~2013年2月24日(日)、「チョコレート展」が開催されます。チョコレートの原料であるカカオ豆の小さな一粒を通じて、カカオを育む自然の恵み、チョコレートを発明した人類の智慧と工夫、世界のつながりなどを、約380点の展示物を通して明らかにします。博物館の展示物をモチーフとしたチョコレートの大型細工も必見!製作したパティシエ達へのインタビューもご覧ください。

平岩 理緒

執筆者:平岩 理緒

スイーツガイド

おなじみのあの動物達も、チョコレートに!

野島茂シェフ(ザ・ペニンシュラ東京)/テーマ:「秋田犬(ハチ)」

野島茂シェフ(ザ・ペニンシュラ東京)/テーマ:「秋田犬(ハチ)」

「ザ・ペニンシュラ東京」の野島茂シェフのテーマは、国立科学博物館に剥製として収蔵されている「忠犬ハチ公」として有名な秋田犬の「ハチ」。でも実は、博物館のハチ公は、私達がよく知っている、渋谷駅前の銅像とは異なり、四足で歩いている姿なのです。

「やはり、ハチ公と言うとあの銅像のイメージが強いので、今回はそちらをモデルにしました。渋谷駅前に行って写真も撮ってきましたよ。ちょうど、ハチ公の上に猫を放して遊ばせているご婦人がいらして、猫に乗られたハチ公の写真になってましたが・・」と笑いながらおっしゃった野島シェフ。70cm×70cm×1mというケースサイズに合わせて、尻尾は少し短めになっています。中心部を軽量化してはいますが、それでも、一体でチョコレートを30kgほど使っているそうです。
チョコレートで「忠犬ハチ公」の毛並みを表現

チョコレートで「忠犬ハチ公」の毛並みを表現

チョコレートを「ロボクープ」という大きなフードプロセッサーのような機械にかけて、摩擦熱でやわらかく粘土状にした物で全体の形を作っています。それを彫刻刀で毛並のように彫り、一度、筆で黄金色を塗ってからカカオバターを重ね塗りし、最後に乾いた布で磨きます。目の部分は、本物の動物のように瞳を入れるのも試みたそうですが、銅像をモデルに作っているので、ここだけリアルになると全体に違和感が出てしまったそうで、あえて、銅像風に浅く彫ったのみとしてあります。

野島シェフは、2003年に世界的に有名な国際製菓コンクール「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」に出場されていますが、その時は飴細工ご担当でいらっしゃいました。ご自身の作風について、「かつては、花とかより、猛獣、蛇や蜘蛛といった物を作ってきましたね。動きの出しやすいもの、生き物を作るのが好きなんです。ザ・ペニンシュラ東京では、スタッフ一人ひとりが “ペニンシュラファミリー”としての自覚を持って働いているので、お子さんが喜ぶような可愛い物を作るようになり、昔と変わりました。」とおっしゃいます。

ザ・ペニンシュラ東京の地下1階、ガラス張りになったペストリーキッチンの窓際には、季節ごとに、マジパンやチョコレート製の可愛らしい飾り菓子が並べられ、通りゆくお客様方の目を楽しませてくれます。野島シェフのハチ公も、博物館で目にした人の心を和ませてくれそうです。
川内唯之先生(香川調理製菓専門学校)/テーマ:「ジャイアントパンダ」

川内唯之先生(香川調理製菓専門学校)/テーマ:「ジャイアントパンダ」

「パークハイアット東京」三代目シェフパティシエを経て、現在は、香川調理製菓専門学校で若いパティシエ達を育成する日々の川内唯之氏。作品テーマは、上野と言えばおなじみの「ジャイアントパンダ」です。国立科学博物館に剥製が収蔵展示されている「トントン」と「フェイフェイ」、二体のジャイアントパンダをチョコレート細工で再現しました。

川内さんは、実際に上野の国立科学博物館へ行き、ジャイアントパンダの剥製をしっかりとご自分の目で観察し、50枚もの写真も撮らせてもらったそうです。
ちなみに、博物館では地球館3階に二体のジャイアントパンダが並んで展示されていて、右が女の子のトントン、左がそのお父さんのフェイフェイとなっています。川内さんのチョコレート作品も、その順に合わせて並べて展示されています。
チョコレート製のジャイアントパンダの顔を正面から見ると・・

チョコレート製のジャイアントパンダの顔を正面から見ると・・

横田シェフと同じく、チョコレートに水飴とシロップを合わせた「プラチョコ」を貼り付けて形を作り、マジパンスティックでパンダの毛並みを表現しています。

「実はパンダにも“つむじ”があるので、そんなふうに仕上げた」そうです。瞳の部分は、あらかじめカカオバターで溶いた食用色素を塗っておいたドーム状の型にチョコレートを流して固め、外したもの。そのようにして、てっぺんに色の入った半球をはめ込んでいます。チョコレート専門店のボンボンショコラでもよく使われている色付けの技法です。

ジャイアントパンダの白黒の模様は、ベースのチョコレートもホワイトチョコレートとブラックのスイートチョコレートを使い分けていて、さらに、黒い部分には、シュガーアートで使うダスティングパウダーという色粉を筆ではたいてつけています。単純に黒一色ではなく、茶色などを複数重ねて、見る角度によって少し色が変わる本物の毛並みのような奥行きを表現しています。

中心部を軽くして一体は5kgほど。周りに笹の森を作ったりすることも考えたそうですが、今回は、博物館にある剥製と同じようにしてほしいというご依頼だったので、あえてそのままにしたとのこと。

一方で、実は剥製にそっくり似せたのではなく、あえて、顔を1割くらい大き目に作っています。
「リアルに作りすぎると可愛くないので、遠くから見てもはっきりわかるようにしました。今回の作品は、子供達に喜んでもらえたら嬉しいです。」と川内さん。
もしかしたら、この「チョコレート展」を見て刺激を受けた子供達の中から、未来のパティシエが誕生するかも知れませんね。

次のページでも、個性ある作風で世界コンクールでも活躍されてきたパティシエの方々からの作品とコメントをご紹介します。
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