住宅ローン市場が競争激化するなか、フラット35の存在意義が問われようとしている。
フラット35Sエコとは、東日本大震災からの復興および住宅における二酸化炭素の排出量を低減するために創設された融資制度のことです。2011年12月1日以降の資金受け取り分から実施され、翌2012年10月31日の申し込み分までを適用期限として誕生した時限措置です。2011年度の第3次補正予算(11月21日成立)に盛り込まれ、復興支援を含意した制度設計となっています。
そのため、被災地と被災地以外で適用金利が一部異なっており、具体的には【表1】のようになっています。長期優良住宅など、特に性能が優れた住宅に対しては6年目から最長20年目まで0.3%の金利引下げが実施される仕組み(金利Aタイプ)になっています。
もともとフラット35Sには予算金額があり、限られた財源の中での貸し出しとなっています。時限措置という制約を受けての暫定制度になっています。
金利引き下げ率は通年0.3% 融資比率も100%から90%へ引き下げられる
では、2012年11月1日以降はどう変わるか、最後に確認しておきましょう。金利プランの名称が変更され、融資内容は【表2】のようになります。「被災地」「被災地以外」といった地域区分はなくなり、金利の引き下げ率も通年0.3%へ縮減。さらに、フラット35Sエコでは100%だった融資比率が90%に引き下げられます。そして、申込み受付が2013年3月31日までとなります。
今年2月、住宅金融支援機構の組織のあり方などを検討する「住宅金融支援機構のあり方に関する調査会」が発足し、業務のあり方を議論するほか、支援機構の透明性の向上に向けた施策などが検討されています。
住宅取得支援政策の1つとして、安定的に長期固定の住宅ローンを低利融資することの必要性はあるものの、具体的な業務や組織のあり方が最適かどうかは検討の余地があり、(1)民業補完の考え方が十分に踏まえられていないのではないか、(2)市場活用型の政策実施機関としてのガバナンスが必ずしも最適な形で実現されていないのではないか、さらに(3)業務の効率化が十分ではないのではないか ―― といった指摘を受け、機構改革の必要性が叫ばれています。
折りしも今年9月、ゆうちょ銀行が住宅ローンなどの新規業務を2013年4月から開始する予定であることを発表しており、自営業者や転職者、さらに女性向けなど、これまで銀行が積極的に取り組んでこなかった顧客を重視すると説明しています。強力なライバル行の台頭により、住宅ローン市場の競争激化は必至です。住宅金融支援機構も波風にさらされることでしょう。住宅金融市場において、どういう“立ち位置”が理想的なのか、議論を深める必要がありそうです。