サウンドモードは一つだけ! 潔さから伺えるボーズの自信
正面から見ると、テレビとの一体感もいい感じだ
まずBSデジタルのバラエティからチェックしてみました。テレビの音声をミュートしBose Soloに切り替えると、人間らしい太いボリューム感のある生々しい声が響きます。マイク越しにスタジオで聴いているような、臨場感があります。
それでは、映画はどうでしょう。日本映画『いとしの座敷わらし』(BD音声ドルビートゥルー5.1chをミックスダウン再生)を聴いてみました。
日本映画がハリウッド映画に比べて劣っている第一がサウンドで、筆者の場合テレビで日本映画を見る場合、セリフが聞き取りにくいので字幕を出してみることもしばしば。しかしテレビから本機に切り替えると、俄然セリフが太くなり肉声の質感が聴こえてきます。口跡が明瞭なのでストーリーが分からなくなることもありません。背景音楽は歪が少なく弦が厚く響き広がり感があります。
テレビの音声はセリフ以外の細かい音が消えて情報が整理されてしまい、のっぺりした音場になるのに対して、Bose Soloに切り替えると、現場収録された俳優の細かなアクションやセットの物音が拾い出されて生き生きとした音場に変わり、映画を見ている臨場感があります。私が一番気に入ったのがそれ。
最後にサウンドにこだわったハリウッドの大作を見ましょう。『タイタニック3D』の衝突シーンは、TV音声は氷山の削れる高い音は出ても、衝突の衝撃を実感させてくれません。しかしSoloに切り替えると、重低音まではいかないまでも、船内に衝撃音が充満してそれを原因に物事が次々に連鎖していくのがちゃんと伝わるのです。Bose Soloに切り替えると、いかに多くのものを失った状態で放送や映画を見ているかが分かります。
シンプルな本体ながら、いままで聞こえなかった音が楽しめるようになる
求めやすい価格と“Solo”の名の通りわかりやすい機能
さて、このBose Soloをどう評価しましょうか。ボーズでは「ホームシアターシステムまでは必要としない人たちのための、テレビをよい音で聴くシステム」と紹介しています。私はホームシアター専門誌の創刊に携わった経験がありますが、日本でホームシアターがニッチな趣味に止まっていることに関して、よく住宅の狭さや操作の煩雑さが挙げられますが、私はそれが原因とは思っていません。理由の本当の第一は、日本人のメンタリティ(気質)にあります。日本人は生活のバランス感覚の高い冷静な人種で、スクリーンの大画面や音がグルグル動くサラウンドに熱くなりません。映画のストーリーや俳優の演技(つまりコンテンツ)がしっかりと伝わってメッセージが感受できればそれに満足を見出し、家庭を映画館に変えようなどという子供じみた考えを起こさず、バランス上の一線を越えないのです。
そうした“ホームシアター未満で満足”のエンドユーザーにターゲットしたBose Soloは日本のマーケットへの的確な分析の跡が伺えます。何より私が感心したのが、サウンドモードは一つだけで不要な機能を全て捨て去った潔さ。ここにボーズの真骨頂を見ます。しかも、Bose Soloの価格は税込み4万2000円。プレミアムブランド・ボーズにして異例の求めやすさ。薄型テレビブームの“宴のあと”に誕生した好企画製品といっていいでしょう。
【関連サイト】
Bose Solo TV sound system