地震保険の仕組みとは?
地震保険の支払いがプール金では不足する場合、保険会社だけでなく法律に基づき国も支払い責任を負う
保険とは、1つの商品でありしくみです。しかし、地震被害は、そもそも保険になじみにくく、保険として成立しにくい災害といわれています。
生命保険にしろ自動車保険にしろ、大量のデータを集めればそれぞれの事故の発生確率がはじき出されます。発生確率がわかるからこそ、保険料が計算でき、それぞれの事故を対象とした保険商品として成立することができます。
保険会社は地震保険から利益を取りません。そして万が一、支払わなくてはならない保険金がプール金だけで不足する場合、保険会社だけでなく法律に基づき国も保険金の支払い責任を負うしくみとして地震保険は作られています。
また、保険の原理の1つに「公平性」があります。抱えるリスクが異なるにもかかわらず、同じ保険料を負担した、同じ条件で保険金を受け取れるのは不公平とされます。ですから通常の保険においては、リスクの著しく高い人は契約を引き受けてもらえないといったことが発生します。たとえば、生命保険の加入にあたり、持病がある人は保険料が割り増しとなったり、場合によっては引き受け謝絶となることがあります。
保険としては成立困難だからこその「助け合いの制度」。それが地震保険の実態
しかし、地震保険はどうでしょうか。地域によるリスクを反映した保険料の差はありますが、リスクが高い地域だからといって損害保険会社が契約引き受けを拒絶するなどということはできません。損害保険会社には地震保険契約を引き受ける義務があるのです(注:もちろん、現状で損害が生じている建物などでは契約はできません)。ですから、南海トラフの地震が警戒される太平洋側でも、首都直下地震が警戒される東京周辺であっても、あるいは軟弱地盤であっても、私たちは地震保険を用いて財産喪失のリスクに備えることができるのです。
つまり、地震保険は純粋に保険としては成り立ち得ない特殊な制度であるがゆえ、事実上の「助け合いの制度」となっているのです。私たちが平時に支払った保険料で作られたプール金が、一定の地震被害を受けた人に渡されるしくみとして、成立しているのです。
わが国は地震活動期にあり、日本全国どこでも地震被害が起こりうるのが昨今。つまり、私たちの誰もがこれまで巨大地震に遭遇しなかったとしても、これからも遭遇しないとは、もはや言えない時代に入ったのです。
私たちの日常が根こそぎ奪われかねない地震被害に備える地震保険は、ほぼ唯一の被災時の経済的ダメージ防止策といえます。だからこそ、地震保険制度の支え手である地震保険の契約世帯は、できる限り多い方がいいはずです。そして、大きな災害でも確実に保険金を支払えるような安定した制度として国や業界に維持し続けてもらうことが、災害大国に住む私たちの暮らしを、確実に守ることにつながるといえるのではないでしょうか。
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