定借を選んだ理由1
マンションの老朽化に伴う諸問題にわずらわされることがない
私が定借マンションを選んだ第一の理由は、マンションの終末期、つまり老朽化にともなう諸問題に煩わされることがない、極めて合理的な住形態だから、ということなのです。
私は今の定借マンションに住み替える前は、築36年のマンションに住んでいました。年に数回原因不明の水漏れに悩まされていたため、管理組合の理事会は給排水管の交換工事を提案しましたが、新築当時から住む高齢の居住者の反対により、対処療法的な補修工事にとどまりました。
旧耐震基準で建てられていましたが、耐震補強のための調査をする動きもありませんでした(3月11日の地震で、結構な被害が出たそうです)。その後、建て替え問題に取り組むため、手始めに住民アンケートが実施されましたが、案の定、高齢な居住者を中心に、建て替えの必要はない、という回答が多数を占める結果となりました。
老朽化したマンションの終末の姿
こうした実態に直面し、老朽化したマンションの終末の姿が見えてきたのです。一時引っ越しなど日常生活に影響を及ぼす配管の交換などの大規模な修繕工事ができずに、居住性が著しく低下する。売却しようとしても、売り出し価格は低くならざるを得ないので、貸したほうが収益性が高くなります。そこで初期段階では、持ち主が退去し賃貸に出す住戸が増えます。更に老朽化が進むと、賃料を下げても借り手がつかなくなり、歯抜けのように住人がいなくなった空住戸が増え、やがてはスラム化していきます。
また、持ち出しなしで建て替えられる好条件のマンションは少なく、一般的には自己負担が必要です。一世帯1000万円以上の建設費用を負担してまで、建て替えをすることを望まない居住者がいることで、確実に立ち枯れていくことが予想されます。
現在は、耐震補強や建て替えについて、前向きな検討がなされているのかもしれませんが、少なくとも私が住んでいたころは、異なる考えを持つ居住者の合意形成ができずに、先行きに不安を抱えるマンションでした。
土地は残るが、売却は事実上不可能に近い?
最後の最後には土地が残り、それを売却すれば、持ち分に応じた金額を手にすることができる、というのは理論上のことで、売却するのは所有者全員の賛成が必要ですが、そのころには、所有者はチリヂリバラバラ。建物の取り壊しの費用も応分に負担しなければなりません。こうした手続きは、事実上は不可能に近いのではないか、出口で回収できる資産はない。老朽化して住めなくなれば、分譲マンションはおしまい、と考えたのです。
ならば、住む期間があらかじめ決められていて、その期限が来たら、あとくされなく消滅する定借マンションのほうが、かえってさっぱりしていていいのではないか、と考えた次第です。