買い主の都合で手付解除された場合、仲介業者は報酬を全額請求できない 

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報酬額は事前に話し合って決めるもの。一方的な提示は認められない。

ここで裁判例を1つご紹介します。仲介業者によって一度、成立した売買契約が買い主の都合で手付解除されたため、仲介業者は約定の報酬額全額(成約価格×3%+6万円)を請求できなかった例です。

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仲介業者は売り主から土地売却の依頼を受け、この売り主と専任媒介契約を締結しました。そして、売却活動を開始後、すぐに買い主が見つかり、売り主と買い主の間で売買契約が成立しました。ところが契約締結後、買い主が手付金を放棄して売買契約を解除してしまいました。仲介業者は「売買契約はいったん成立している」として、売り主に報酬を請求しましたが、売り主は支払う義務はないとして請求を拒否しました。その結果、訴訟へと発展し、司法での判断に委ねられることとなりました。

判決は、手付金放棄によって売買契約が解除された場合、媒介契約上の報酬額についての合意は適用されないと結論付けられました。売り主は、仲介業者に約定の報酬額全額を支払う必要はないということです。しかし一方、仲介業者に何ら報酬請求権が生じないとするのも衡平を失すると言及しており、商法(下記参照)に基づき相当な請求ができるとしました。

商法/報酬請求権

 

結論として、仲介業者は手付金の額の半分に当たる金額を報酬額として請求できると判示しました(福岡高裁 2003年12月25日判決)。仲介業者は売買契約をいったん成立させても、当然に報酬額全額を請求できるわけではないのです。

住宅ローン不成立で契約解除された場合、仲介業者は報酬をいっさい請求できない 

不動産売買は「契約の目的物の引き渡し」=「残金決済」をして初めて、すべての取引が完了します。裁判例のような「買い主の手付解除」の他にも、「住宅ローンの不成立による契約解除」「買い替え不成立による契約解除」、さらに「合意による契約解除」など、仲介業者には乗り越えるべき高いハードルがいくつも待ち構えています。取引を完結するには、内在する契約解除要件を1つずつクリアしていかなければなりません。こうした要件を全部クリアして、ようやく仲介業者は報酬を手にできるのです。

(1)買い主の手付放棄により売買契約が解除された場合
仲介業者は報酬請求権を行使できると解されているが、前述した福岡高裁の判例にあるように、必ずしも全額を請求できるとは限らない。

(2)買い主の住宅ローン不成立により売買契約が解除された場合
仲介業者は報酬請求権を行使できず、すでに受領していれば売り主に返還しなければならない。

(3)買い替え不成立(停止条件の不成就)により売買契約が解除された場合
仲介業者は報酬請求権を行使できない。

(4)買い主と売り主の合意により売買契約が解除された場合
仲介業者は報酬請求権を行使できる。

想定される各ケースに応じた一般的な報酬請求の可否を整理したのが上の(1)~(4)です。特に(2)について、標準媒介契約約款では住宅ローン不成立の場合、受領した報酬は返還しなければならないとしています。「売買契約はいったん成立している」という仲介業者の理屈は通用しませんので、一般消費者の人(売り主)は覚えておくと安心です。

クレーム産業と言われる不動産取引で無益な支出をしないためにも、媒介報酬に関する正確な知識を持つようにしましょう。

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