投資対象から配当収入が少ないことが原因
通貨選択型ファンドを除くと、高額の分配金を支払い続けていた海外REITファンド。その高額分配があだとなったのか、夏場にかけて続々と分配金を減額しています。たとえば、国際投信投資顧問のワールド・リート・オープンは2012年8月に1万口当たり65円を55円に減額(2012年に2回目)。大和証券投資信託委託のダイワ米国リート・ファンド(毎月分配型)は2012年7月に1万口当たり130円を100円に、同運用会社のダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)も同じ時期に、1万口当たり110円の分配金を80円に減額しています。 分配金の減額ラッシュとも言える状況の海外REITファンドですが、分配金が減額されている背景の1つには投資先であるREIT(不動産投資信託)からの配当金が増えないことに要因があるようです。毎月分配型の投資信託は、投資対象であるREIT、債券、株式などの配当金、利子などを分配金の原資としています。これらインカムゲインをベースに、売却益なども分配原資に加えて安定的な分配金を支払う形を取っているのです。ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)を例に分析してみましょう。同投信は、1万口当たり110円の分配金を支払っていたのですが、現在では80円に減額されています。2012年8月末基準のマンスリーレポートを見ると、過去1年分の配当等収益(経費控除後)が記載されていますが、8月の決算時点では分配金80円に対して6円しか確保していないのです。80円-6円=74円は投資信託が分配余力として保有している分配対象額から取り崩していることになるのです。たまたま、8月の配当等収益が少なかったのかもしれないので、過去1年分の平均額を計算すると約9.42円しかありません。分配対象額からの取崩額が余りにも多く、かつ長期にわたっているため、分配金の減額に踏み切ったわけです。ちなみに、1万口当たりの分配金が110円のときには、過去1年平均では100円以上の取崩しがなされていたのです。
さらなる分配金の減額はあるのか?
毎月分配型投資信託に個人投資家が求めるものは、安定した分配金を長きにわたり受け取り続けることだと思われます。とすれば、分配金の減額は由々しき問題になるのですが、この先海外REITファンドの分配金は再び減額されるのでしょうか? 鍵は分配金の支払い余力、ダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)で言えば、分配対象額ということになります。 同投信の2012年8月の分配金支払い後の分配対象額は3126円。仮に8月の決算と同金額、74円を取り崩したとすれば、3126円÷74円=42.24ヶ月の余力があることになります。3年半の余力があることになりますが、3年半は決して長いほうではありません。ただ、同ファンドは2012年1月、2月にREITの売却益を確保して、分配余力に加えたことが運用報告書から読み取ることができます。合計で508.12円です。毎月の配当等収入が少なくても、分配対象額でカバーできる余力がそれなりにあるため、数か月以内に分配金が減額される可能性は低いでしょう。また、REITの売却益を計上することで分配対象額の急減を防げることも分配金の減額を遅らせる要因と考えられます。
しかし、配当等収益が少ないことを考えると、お世辞にも健全性が高い毎月分配型投資信託とはいえません。運用環境が急速に悪化しない限りは、分配金の再減額が数ヶ月以内にないと思われますが、砂上の楼閣のような状況に変わりはないと認識しておくべきでしょう。なお、例に取り上げたダイワ・US-REIT・オープン(毎月決算型)Bコース(為替ヘッジなし)以外の海外REITファンドの大多数の状況は、いずれも似たり寄ったりということを付け加えておきましょう。