小鹿田は日本の宝であるばかりでなく、世界の貴重な宝
今回大変楽しみにしていたのが、大分・小鹿田(おんだ→おんた、とも呼ぶが、筆者のように大分生まれは「おんだ」と呼ぶ)でリーチが作陶した器や絵。小鹿田焼、この焼き物は僕にとっても非常に大切なデザインのルーツなんです。
小鹿田は、九州・大分県。大分は筆者の生まれ故郷です。
大分空港から車で2時間位かな…大分と福岡の県境にある周囲を山に囲まれた盆地:日田。
林業がとても盛んなところ、そして水がとてもきれいで「日田天領」という飲料水が販売されていますね。また、高校野球も盛んで「日田林工」は甲子園野ファンにも記憶に残る名門校です。林業や工芸が盛んなため、県立試験研究機関:日田産業工芸試験場があり、今でも工芸デザインやモノ作りがとても盛んです。
日田の中心地から車で30分位山のほうに向かうと「皿山」という小鹿田焼の里があります。
当時来日したリーチがとても気に入った場所です。数週間泊まり込んでは陶芸の指導し、また自ら作陶して数々の名品を残しました。
小鹿田焼は、土地の原材料により大型の甕(かめ)や壷類、皿鉢、茶器など種々の生活雑器を生産し、刷毛目、櫛描、流掛け、飛び鉋(特に有名な技法)等の飴釉や黒釉をかけたものが特徴的です。
リーチは、ここ小鹿田で自信が再び東洋に来ることになった真の動機が、「巣の中の功人たちを見つけ出し、彼らとともに暮らし働くことから、産業革命以来私たちが失ってしまった総体性(物事の全体をとらえる)と謙虚さを学びとることである。」と述べています。
小鹿田の人々の陶業は「自然に則したもので、ほとんど美を意識せずに作られており、それはいつも変わることなく、共同一致が基調をなしている」と絶賛しています。
また1968年に来日した折には、短い期間ですがこの皿山に寄っています。当時の朝日新聞によれば「見せてもらった最近の製品も、かつて私を驚嘆させたものをそのまましっかりと保持していた。(中略)自然と人間との純粋な結び付きといったものが、ここに残っている」(「十年目の小鹿田皿山」、朝日新聞、1964年10月5日)。そして「小鹿田は日本の宝であるばかりでなく、いまや世界の貴重な宝なのだから」と結んでいるのです。嬉しいですね、この賞賛の言葉。
日本民藝運動のメンバーと日本各地の産地を回り、指導し、制作したバーナード・リーチ。リーチが目指した「東洋と西洋の美の融合」は、近代日本の陶芸や工芸デザインが進むべき1つの指標となりました。
近代デザインのルーツである産業革命の英国。その英国人のバーナード・リーチが、極東の地である日本で民藝運動に関わったことは大変興味深いですね。
使い捨ての大量生産・大量消費が、今や世界中で環境汚染やゴミ問題など社会問題化し、問われる「工芸・デザインの本質」そして「今後の在り方」に対し、改めて日本民藝運動の考え方、作り方、使い方は、新鮮に映るのです。
とりわけバーナード・リーチが残した数々の作品からは、そんな現代に対して「考えるヒント」と、理屈抜きに「温もりと用の美」を感じてやみません。
■バーナード・リーチ展
東京日本橋高島屋 2012年8月29日-9月10日
横浜高島屋 2012年9月19日-10月1日
大阪高島屋 2012年10月10日-10月22日
京都高島屋 2012年10月31日-11月11日
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