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『スタッキング可能』松田青子インタビュー(6ページ目)

「さいしょの1冊」をテーマに話題の本の話を聞きます。第1回のゲストは、松田青子さん。初めての単行本『スタッキング可能』について語っていただきました!

石井 千湖

執筆者:石井 千湖

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――「ちふれ」の正式名称が「全国地域婦人団体連絡協議会」であるとか、化粧品の使用説明書の適量が「あずき大」からいつのまにか「パール1個分」になっているとか、よくそういうところに気づくなあと。

松田 「パール1個分」としれっと書いてあるけど、ちょっと前まで「あずき大」だったよな、不思議だなと思って。そういうことにふっと気づく瞬間ってありますよね。あれ?って。
 
――シリーズの続編の展開もおかしかった。「マーガレットは植える」はまた、ユニークな書き方をされていますね。

松田 あれを書いた経緯は、言うとバカみたいな話なんですけど(笑)。はじめに、シャツがほしいと思ったんです。シャツに定評があるところってどこだろう、と思って、マーガレット・ハウエルを検索したら「マーガレットは植える」って変換されたんですよ。それを見た瞬間、いつかマーガレットが植える小説を書こうと思って、「マーガレットは植える」とだけメモしておいたんです。

――まさかマーガレット・ハウエルから来ているとは(笑)。マーガレットは毎日届く箱の中にある何かを植える仕事をしている。最初は素敵なものを植えていたんだけれども、だんだん箱の中から変なものしか出てこなくなる。怖かったです。

松田 他の作品もそうなんですけど、みんな今いるところにいなくちゃいけない。自分では選べないじゃないですか。その中で、仕事をしたり、考えたりしながら、踏ん張って立っていること自体が希望なんじゃないかなというのがあって。わたしには届く箱を選ぶ権利はなくて、素敵なものがひとつも出てこなくなる瞬間ってあるんですけど、それでも踏ん張る気持ちを描きたかったんですね。
あとは、マーガレット・ハウエルって、素敵なライフスタイルの象徴みたいな存在じゃないですか。

――質がよくてシンプルなデザイン、というイメージがあります。

松田 そういう感じの服を着て、英国風の庭がある素敵なおうちで暮らすような生活に憧れているんだけど、ドトールでタウンワークをめくっている。切ないなみんな、自分も含め、みたいな。
 

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