中学生が最初に触れる歌舞伎
「勧進帳」は音楽の教科書にも登場する演目で、「松羽目物」という、舞台装置が能・狂言に近いシンプルなセットで行われるものです。内容も、主君である源義経と無事に関所を越えるために主従関係を逆転させたように見せかける武蔵坊弁慶が、詮議をする富樫の追及をかわすため、何も書いていない書状を「勧進帳」として、朗々とその中身を読み上げる、というところが大きな見どころとなっています。
富樫との丁丁発止のやりとり、そして心ならずも、義経が扮する弟子が疑われると知るや富樫らの眼前で打ちすえるなど、並の主従ではできない対応の様子は、眼前の一行が義経主従であるとにらんでいる富樫が一切口出しできないばかりか、そうであるならば、主君の命を守るためなら何でもする、という弁慶の覚悟が読み取れてむしろ感服させられてしまう、というポイントも外せません。
歌舞伎の表現の多様さを楽しめる演目
「義経千本桜」は、「勧進帳」でも登場する義経の名が題名に冠されている演目ですが、義経にまつわる人々にスポットが当てられた芝居です。中でも初心者にオススメなのは、三段目の「すし屋」と、四段目の「道行初音旅」と「川連法眼館」です。
「すし屋」はいがみの権太が、四段目は静御前と佐藤忠信(狐忠信)がメインになりますが、権太と狐忠信の行動とその裏に隠れた心情がポイントになります。
この演目は、歌舞伎の中での「世話物」「所作事」「時代物」の一端を垣間見ることができ、他の段にも歌舞伎としての見どころが多い演目ですが、通し狂言として全段が上演されることがなかなかない分、初心者にも見やすい長さに分けられています。