咀嚼能力と食感の関係
人気の干し野菜も、よく噛むことにつながります。
赤ちゃんは、乳を飲み、やがて離乳時期からトレーニングを始め、少しずつ段階を経て1歳半くらいになって咀嚼できるようになっていき、さらに年を重ねて咀嚼能力は発達していきます。
一方高齢者になると、咬み合わせる力や舌の機能が低下し、唾液分泌量が減少することで咀嚼能力が低下します。また歯根膜は、歯が抜ければ一緒にはがれ落ちてしまうため、入れ歯などの義歯では食感を感じにくくなります。
咀嚼能力の低下した高齢者の食事や、要介護者の介護食では、誤嚥などから起こる窒息や肺炎を防ぐために、どろどろとさせた流動食が使用されることがあります。しかし味はよくても、煮物なのか、焼き魚なのかわからないような食事を、必要以上に行うと摂食意欲や消化機能の衰えを加速しまうこともあります。いつまでもおいしく食べるためには、自分の歯を大切に長くキープすることも重要です。
味、食感もバランスを図り健康的な食事を
よく噛むことは、消化を助けるだけでなく、歯の健康にも役立ち、また肥満防止や、脳の活性化、全身の健康にも関わるということが、近年は取りあげられています。高齢者に限らず、現代人の食事は軟らかいメニューが好まれる傾向があり、子どもの頃からよく噛む習慣をつけることは大切な事です。絶対に軟らかい料理を食べてはいけないというわけではなく、五つの基本味のバランスをとるように、食感もバランスを図ることを意識してみましょう。
少し大きめのプリンを食べていると、飽きてしまいサクッとした食感が欲しくなったりします。その点、茶碗蒸しには、えびや、ほうれん草、シイタケ、銀杏など、様々な具材が入り、一品の中でも様々な食感が楽しめます。味覚に加えて食感のバランスを図るということは、幅広い食品を使い、栄養面でもバランスのとれた食事につながるのではないでしょうか。
現代人の肥満を防ぐためには、運動やストレス発散、夜型生活を見直し改善するなどの努力も必要ですが、食事の量においては、腹八分目で満足できるようにすることも重要です。ストレスも多いと油っぽいもの、甘いものをたくさんたべたくなったりするものですが、心理的な満足感を支えるためにも、できるだけ日々の食事で「おいしさ」を感じられることが大切です。おいしさのなかの「食感」も、ぜひ意識してみてください。
参考/
・食品学総論(化学同人)
・研究ニュースNo.19(食品総合研究所)
・おいしさの分析(公益社団法人 日本分析化学会)
その他