お金や通帳の管理が不安な人におすすめ
日常生活自立支援事業は、成年後見制度より手軽に利用できます
「田舎の親が最近お金にルーズになって、年金が入ったら全部使ってしまうみたい」
「うちの親は、悪徳業者に騙されたりしていないかしら?」
高齢を迎えた親のお金の管理は、離れて暮らす子どもにとって不安なもの。認知症などのために判断能力が弱っている場合は、なおさらです。高齢者を狙った悪徳商法も、手を変え品を変えて登場していますし、家族が気がついたときには既に貯金が底をついていたなどということにもなりかねません。
「日常生活自立支援事業」は、判断能力が弱っている認知症の高齢者や、知的障害者、精神障害者に対して、その人が自分自身の権利を侵害されることなく、地域で自立した生活が送れるようにサポートするため、国が行っている事業です。2007年4月までは、「地域福祉権利擁護事業」と呼ばれていました。この事業の利用契約を行うと、専門の研修を受けた生活支援員が家まで訪れ、日常的な金銭管理や各種サービスの利用、見守りなどの支援を受けることができます。
介護保険とは別のサービスなので、介護保険サービスを限度額いっぱいまで利用している人や、要介護認定で「非該当(自立)」と判定された人でも、申し込みの要件さえ満たしていれば利用が可能。市区町村の社会福祉協議会が窓口となっているので、お金や通帳の管理などに不安のある方は、相談してみましょう。
どんなサービスが受けられるの?
日常生活自立支援事業で受けられるサービスと、利用料の目安は次の通りです。
1.福祉サービスの利用援助……1回あたり1,200円ぐらい~
- 福祉サービスを利用、またはやめるために必要な手続き
- 福祉サービスの利用料を支払う手続き
- 福祉サービスについての苦情解決制度を利用する手続き
2.日常的金銭管理サービス……1回あたり1,200円ぐらい~
- 年金および福祉手当の受領に必要な手続き
- 医療費、税金、社会保険料、公共料金などを支払う手続き
- 上記の支払いに伴う預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続き
3.書類などの預かりサービス……月額250円ぐらい~
- 重要な書類などの保管(年金証書、預貯金の通帳、権利証、契約書類、保険証書、実印、銀行印など)
※不動産、宝石、貴金属、骨董品などは預かってもらえません。
なお、地域によって利用料金や細かいサービス内容は異なるので、詳しくは近くの社会福祉協議会にお問い合わせください。
どうやったら利用できるの?
日常生活自立支援事業を利用するには、まず近くの社会福祉協議会に連絡し、相談することが必要です。サービスを利用するまでの大きな流れは、次の通りです。
1.社会福祉協議会に連絡
本人ではなく、家族などが連絡することも可能です。
2.専門員による訪問・相談
専門的な知識を持った担当者(専門員)が自宅や施設、病院などを訪問し、相談に乗ってくれます。
3.支援計画・契約書の作成
相談で伝えた困りごとや希望に合わせて、具体的な支援内容を計画書や契約書にまとめてくれます。
4.契約締結
契約内容に問題がなければ、社会福祉協議会と利用者本人が利用契約を結びます。
5.サービス開始
生活支援員によるサービスが提供されます。
相談を行う過程で専門員が「利用者の契約能力の確認が難しい」と判断した場合、社会福祉協議会のなかに設置されている契約締結審査会でサービスを利用できるかどうかの審査を受けることになります。
成年後見制度とどこが違う?
一見すると、成年後見制度とよく似ているようにも思える日常生活自立支援事業ですが、利用者が自ら契約を結ぶ必要があります。判断能力が弱りすぎて、契約を結ぶことができなくなってしまうと、この事業を利用することはできなくなってしまいます。この場合は、少しでも早く成年後見制度を利用したほうが良いでしょう。
日常生活自立支援事業の魅力は、手軽に利用できることです。成年後見制度のように複雑な手続きも必要なく、利用料も低いうえに、いつでも契約内容の変更や解約を行うことができます。
逆に、成年後見制度と違って、次のような日常的な生活援助の範囲を超えるサポートを受けることはできません。
- 不動産の売却
- 施設に入所する場合の代理契約
- 後見人自らの名義による、悪質商法への払い戻し請求 など
成年後見制度の申請から利用開始まで一般的には3~6カ月ほどかかるため、高齢者本人の状態や今後のことをよく考え、日常生活自立支援事業と成年後見制度をうまく使い分けられるようにしたいものです。