油脂類は腹持ちのよい食品
夜型の生活や運動不足も影響しますが、「消費するエネルギー量」よりも「摂取するエネルギー量」が多く脂肪として蓄積することも、肥満の原因の一つです。揚げ物を「まったく食べてはダメ」と決めつけては、ストレスもたまります。肥満が気になる方は、ランチに揚げ物を選ぶなら夜は軽めに、あるいはたまに夕食に揚げ物を食べたいという時には、後の1、2日は軽めの食事にするようにして、バランスを図りましょう。
油脂類は、ごはんなどの糖質よりも、消化・吸収に時間がかかるため、腹持ちがよい食品です。「油脂類や肉を食べれば太る」と誤解して、その摂取量を極端に減らすようなダイエットをしていると失敗の素です。
というのは、脂質やタンパク質もとらなければ、食後すぐに空腹になり、かえって間食が増えたり、だらだら甘いものを食べ続けてしまい、思うようにダイエットをしているつもりでも効果がないことがあります。健康的な体重コントロールは、幅広い食品から栄養のバランスよく、油脂類も適量を上手にとりましょう。
揚げ物は素材や衣により吸油率はさまざま
揚げ物は、確かに油を吸いますから、生の食品と比べて100g中のエネルギー量は高くなります。しかし、具材の種類や大きさ、衣、油の温度や揚げ時間などによって異なってきます。『五訂増補 調理のためのベーシックデータ(女子栄養大学出版部)』から、いくつか例をあげて比べてみましょう。衣のかさが多いほど吸油率は高くなります。また、脂肪の多い肉や魚は素揚げやから揚げにすると、揚げている間に脂肪が溶け出るので、エネルギー量は天ぷらやフライと比べると低くなります。
ただ気をつけたい点は、素揚げの場合でも、かぼちゃ(7%)や揚げ団子(1%)などは低めですが、クルトン(99%)やパセリ(61%)のように、水分をほぼ出し切るようなものは吸油率がたいへん高くなります。
また同じじゃがいもでも、くし形切り(皮付き4つ割り)は吸油率2%ですが、せん切り(1.5mm角×5cmの細いせん切り)は19%にもなります。
から揚げの場合、片栗粉か小麦粉を使うかでも異なり、小麦粉をまぶした方が吸油率は高くなります。
エネルギーは高くなるが、コレステロールは減ることも
衣揚げでは、揚げ油が吸収されて、一般にエネルギー量は高くなりますが、肉に含まれている脂質が油に溶け出し、代わりに植物油が肉に入るので脂質の内容が変わります。肉の飽和脂肪酸が減り、植物油の不飽和脂肪酸が増えるので、コレステロールは減少します。同様に脂溶性のビタミンA、E、D、K、β-カロテン、魚に含まれているEPA、DHAなどの脂肪酸の一部も素揚げでは、減ってしまいます。
衣揚げは衣に守られることで、ほとんど損失はないようです。また衣に守られた脂溶性ビタミンは、油と一緒に摂取することで吸収がよくなります。
水溶性のビタミンCは、茹でる調理法では水分に溶けてしまいますが、揚げ物なら高温の油の中で短時間で加熱調理されるため、ビタミンCの損失は少なくなります。
脂身の多い鶏もも肉よりも脂身の少ない豚肉の方がエネルギー量が低くなる場合もありますから、エネルギー量が気になる方は、できるだけ脂身の少ない素材を選ぶことと、衣の種類をチェックすることがポイントです。
参考/
・『キッチンにおける『油』の存在’97~’09 12年間の変化と最近のトレンド』(日清オイリオ 『生活科学情報ショートレポートNo.14』)
・『五訂増補 調理のためのベーシックデータ』(女子栄養大学出版部)
・『エネルギー早わかり』(女子栄養大学出版部)
・『栄養「こつ」の科学』(柴田書店)
・食肉の栄養知識(熊本県畜産広場)
その他