そして――作品に恵まれた、宙組トップスター時代のすべて。
宝塚ファン皆を恋人にした『カサブランカ』のリック。劇画から飛び出したように魅力的だった『TRAFALGAR』のホレイショ・ネルソン。世紀の恋人と言われても純粋なままのルディ『ヴァレンチノ』のルドルフ・ヴァレンチノ。最高の男に仕立てあがった『クラシコ・イタリアーノ』のサルヴァトーレ。
哀愁漂う『華やかなりし日々』のロナウド。薔薇の花束を肩に背負う姿の何と素敵なこと!
大作『誰がために鐘は鳴る』では、精悍で包容力のあるロバート・ジョーダンを熱演。ラスト、銃を構えた姿のカッコよさ、なんとも言えぬイイ表情が忘れられません。
渋い大人の男が似合う大空祐飛さんのもう一つの当り役、それは『銀ちゃんの恋』の倉丘銀四郎でした。ヒドイ男です。なのに小夏がヤスが慕ってやまない銀ちゃんは、繊細で不器用であったか~い人間・銀ちゃんでした。
ニヒルでクール。凛々しくて清々しい。誠実でひたむき。観ている者の肩の力を抜いてくれる。型ではなくリアル。
また、相手役や共演者を見る大空さんの眼差しはいつも優しく、どんな役にも温かさが溢れていました。
演技力が評価され、2011年に第32回松尾芸能賞・優秀賞を受賞しました。
そして『クラシコ・イタリアーノ』が23年度文化庁芸術祭の優秀賞を受賞。
また2011年「FNS歌謡祭」にも出演し、宝塚歌劇の魅力を発信しました。
決して順風満帆なスターとは言えないでしょう。
同期生が先にトップスターになっていく……同期生や下級生の下につくこともあった……。自身もファンも、トップスターという地位をあきらめかけた時期もあったでしょうね。しかしそうした時期が、こんなに大きな男役・大空祐飛を育てたに違いありません。
舞台という大きな空で羽ばたき飛び続けたナイス・ガイ、大空祐飛。飛ぶことをやめなかった彼女自身が、大きな宙になりました。