洗練と軽快さとフルーティーさの「壱岐の蔵酒造」
印象的な女性の顔。上から見ると微笑んで見えるとか。
神秘的な女性の顔が描かれたボトル「壱岐っ娘」が知られるこのお蔵。2010年10月から株式会社になった。その前は6蔵が集まる協業組合であった。人気ブランドであるすっきり洗練された「壱岐っ娘」のほか、適度な香ばしさと米の甘みのバランスがよく飽きのこない「壱岐の島」、コクがあり濃厚な「大祖」など数種類を製造販売する。
これがうわさの(!)なでしこ焼酎だ!
今おすすめなのはその名も「なでしこ」。そう、女子サッカーチーム「なでしこジャパン」の活躍で、同じ名前の焼酎が一躍注目の的となった。なにしろ昨年のワールドカップ優勝の際の出荷数はなんと前月の10倍! もちろんサッカーが話題になる前から存在する商品だし、イメージのみで命名されたわけではない。仕込みの際に使用される酵母が野生のなでしこの花から分離した花酵母なのである。実際、華やかでフルーティーで吟醸酒のような風味が楽しめる。この夏のロンドンオリンピック、素敵な偶然が、われらが「なでしこ」を味方してくれることを祈りたい。
麦焼酎ならではの樽熟成の風味
樽がずらり並ぶ倉庫で説明をしてくださる原田製造部長
敷地内には仕込み室と蒸留所とさらに広大な熟成庫がある。350本のシェリー樽に寝かされる焼酎は樽の中で2年、その後ステンレスのタンクに移りトータル5年ほどの熟成期間を経て瓶詰めされる。甘く香ばしく漂う樽熟のフレーヴァーは心奪われる。麦焼酎はウイスキーと同じ麦原料ゆえに樽熟成は向いていると思われるが、実は麦焼酎ならではの「米麹」の甘味がより複雑で芳醇なおいしさを生み出してくれるのだとか。なるほど、これぞ本格麦焼酎ならではの魅力だ。
酵母は自家培養されている
「原料の麦は佐賀県産のニシノホシ、ニシノチカラ、米は9割を島内産使用でまかなっています。最近はより焼酎に向く米栽培の研究も行っており、壱岐ブランド米『夢十色』にも着手しています」と語るのは製造部長の原田知征さん。東京農大花酵母研究会理事も務める若きリーダーである。
安売りにしてはならない
原田頴一社長自らがお客様にお酒を注ぐ
「昔は水割りやロックではなくそのまま25度をストレートで飲みました。この島では、うれしいにつけ悲しいにつけ焼酎が飲まれてきました。ビールで言えばまさにラガー。安売りにならないような酒造りをしていかなければ」とは原田頴一社長。観光バスで来社するお客様に自らお酒を注いでおもてなしする姿に焼酎への深い愛情が感じられた。
壱岐の蔵酒造