街路に立てられた電柱、そして張り巡らされた電線(配電線)は、どこでも見かける、ごくありふれた光景でしょう。

電柱と電線

電柱と電線は毎日の生活に欠かせないインフラ


電柱や電線が存在することは当たり前で、毎日の生活のなかではまったく気にならないという人も少なくないだろうと思います。

電柱と電線

電柱が立ち並んでいても、日常生活ではあまり気にならない?


近年は都心部や、国道など幹線道路沿いを中心に、道路の無電柱化、電線類の地中化などが施工され、すっきりした街並みも次第に増えつつあります。しかし、生活道路や住宅地での対策は、依然としてほとんど進んでいないのが現状でしょう。

張り巡らされた電線

電線越しに見るマンション


外観を気に入って購入したマンションや一戸建て住宅があっても、電線越しにしか全景を見ることができないときは、その魅力も半減してしまいます。人気のある高級住宅地でも、ちょっと視線を上げてみると電線が縦横に張り巡らされていることが少なくありません。

電柱と電線

人気の高級住宅地でも例外ではない


建物の外観のことは横に置くとしても、家に近接して電柱が立てられ、バルコニーやベランダに出るとすぐ目の前に電柱や電線、変圧器があるときは、さすがにほとんどの人が気になるのではないでしょうか。都市部では敷地と道路の境界ぎりぎりまで住宅が建てられるケースも多く、そのぶん電柱や電線との距離も短くなりがちです。

また、道路におけるバリアフリーなどの観点から、電柱を道路から敷地内へ移設するよう指導している自治体もいくつかあります。

電柱と電線、変圧器

一戸建て住宅に近接する電柱、電線、変圧器

電柱と電線、変圧器

マンションにほとんど密着する電柱、電線、変圧器


中古住宅の場合には現地を見ればすぐに分かりますが、区画数の多い新築分譲住宅の場合には後から電柱が立てられることもあるので注意しなければなりません。敷地の造成工事や建物の基礎工事の頃には電柱がなく、売買契約が終わってしばらくしてから再び現地に行ったら「購入した区画の前にいきなり電柱が立っていてびっくりした」という失敗談を聞くこともあります。電柱を立てる予定位置などはあらかじめ決まっているため、工事中の現地を見て「電柱がないから安心」と思い込まず、造成区画全体の図面などを事前にしっかりと確認することが必要です。

電柱と電線、変圧器

マンションのバルコニーや外廊下に密着する電柱には防犯上の問題も


その一方で、もともと狭い道路でセットバックによる拡幅があったにも関わらず、電柱が長年にわたり移設されないまま交通の障害になっているような例も少なくありません。これにかぎらず、電柱が歩行者の安全を妨げているケースも多いだろうと思います。

狭あい道路と電柱

道路が広がっても、電柱がその効果を半減させる?


電柱や電線の工事や保守に、危険と隣り合わせで従事されている人には感謝しなければなりませんが、景観上の問題、通行上の安全確保、防犯対策、地震など大規模災害時の避難路対策などにより、道路の無電柱化は急がれるべきです。

遅々として進まない一般住宅地の無電柱化ですが、街並みの整備に伴って無電柱化したり、最低限の引き込み用ポールだけに留めたりするところもいくつか見られるようになってきています。

無電柱化した街並み

既存住宅地でも無電柱化した街並みが見られるようになってきた


古いところでは、横浜市磯子区汐見台の住宅地が無電柱化されています。県営住宅、企業の社宅、分譲マンションなどが建ち並び、一戸建て住宅はありませんが、昭和30年代の大規模造成工事にあたり、電線類の地中化が行なわれました。当時では珍しかったと思われる景観保護の意識と同時に、塩害防止の目的もあったようです。

無電柱化した街並み

横浜市磯子区汐見台の街並み


東京では、練馬区の光が丘パークタウン(光が丘団地)が電柱、電線のない街として比較的よく知られた存在でしょうか。大規模な公園を含む約186ヘクタールの街区がほぼ無電柱化されています。分譲と賃貸で合わせて約1万2千戸の住宅があるようです。

無電柱化した街並み

光が丘パークタウンの街並み


無電柱化された一戸建て住宅地としては、東京都が定期借地権方式によって宅地分譲した「むさしのi(アイ)タウン四季の街」(東村山市本町)、民間による「グランフォーラム宮崎台 桜の邱」(川崎市宮前区宮崎)、横浜市中区本牧和田の区画などもあり、いずれも空の開放感に満ちた街並みを実現しています。

無電柱化した街並み

むさしのiタウンの街並み

無電柱化した街並み

グランフォーラム宮崎台の街並み

無電柱化した街並み

横浜市中区本牧和田の街並み


神奈川県逗子市小坪三丁目の「披露山庭園住宅」は、昭和40年に開発が始まった比較的古い分譲地ですが、電線などが開発当初から地中化されています。初めの敷地規模が約300坪となっていて、現在でもその敷地面積が維持されている区画が多く、住宅街というよりも「邸宅街」といった趣です。建ぺい率は20%で、道路に面する部分は多くの植栽に覆われているため、電線がないことと相俟って他の住宅地とは一線を画す景観を創り出しています。

無電柱化した街並み

披露山庭園住宅の街並み


これらにかぎらず、無電柱化、電線類の地中化がされた住宅地は全国に数多くあるでしょうが、全体からみればまだほんの一部に過ぎません。このような敷地の購入を検討する機会がある人も、かなり少ないだろうと思います。

道路が狭い場合には無電柱化にいくつかの支障もあるようですから、一般住宅地における100%の無電柱化は、来世紀になっても実現しないかもしれません。しかし、多くの住宅地では着実に無電柱化、電線類の地中化が進んでいくはずです。それが数十年先のことかもしれませんが、住宅を購入するときには目の前の電柱や電線についても考えてみたいものです。


関連記事

不動産売買お役立ち記事 INDEX

鉄塔、送電線、高圧線
(Q&A) 敷地の前の邪魔な電柱は動かせるの?
電柱や電線が「ある街」の資産価値


※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。