明治大学近くで、静かに街に溶け込む「漢陽楼」
神保町界隈には小さな飲食店が多く密集し、ランチ客を呼び込もうとさまざまな看板が目に飛び込んできます。昼時は周辺のビジネスマンや、学生たちでにぎわいがありますね。地下鉄の神保町駅から明治大学へ向かう通り途中、富士見坂の左手に、中華料理の老舗店「漢陽楼(かんようろう)」があります。中国民家風のかわら屋根に店名を記した木の看板が印象的です。最寄駅は神保町。A5出口から3分程度ですが、JR御茶ノ水駅からも6、7分の立地です。“面構え”はそれほど威圧感はないので、気軽に入れそうな雰囲気でしょう。
創業は1911年(明治44年)
漢陽楼の創業は1911年(明治44年)です。創業者である顧雲海は当初、別の仕事をしていましたが失業。彼の周囲に中国人留学生が多く集まっていたこともあり、料理の上手さから、店を出すことをアドバイスされます。店は留学生たちにより手作りで完成し、その留学生向けに郷土の味を振舞っていたといいます。そんな留学生の中には、のちに日本との国交正常化を行った周恩来(国務院総理)の名前も。同店では外せないエピソードの1つです。そんな漢陽楼がスタートを切った1911年とはどんな年だったのでしょう……。
小村寿太郎らの尽力により、欧米列強国との間で、日本は関税自主権を完全に回復します。中国では、辛亥革命が起こり、清朝が終わりを告げ中華民国が樹立。
ちなみに同店の店名漢陽楼は、“漢”は漢民族のこと、“陽”は太陽の輝きを表し、「太陽が漢民族を照り輝かせている」という意味から付けられたとのこと。史実も含めてすごいタイミングとネーミングですね。
その他、江戸の起点・日本橋が木の橋から石橋へと架けかえられ、速達郵便がスタート。鈴木善幸元首相、岡本太郎、アメリカ・レーガン元大統領などが生まれたこの年、同店もその歩みを始めています。
では、若き19歳の周恩来が通った中華料理店へと参りましょう