「投資をしない」という価値観も大いにけっこうです
私は基本的に投資推奨派ですが、誰でも投資をやるべきだとは思っていません。なぜなら、やはり向き不向きがあるからです。それは能力の問題ではなく、価値観やライフスタイルで、という意味です。投資活動は、経済全体には必要ですが、個人にとっては必需品ではありませんし、投資や運用は人生に必須の活動でもないと考えています。「貯蓄から投資へ」、「お金は銀行に預けるな」と言われ、専門家や経済評論家たちの発言の中には、「資産運用をしないと老後は大変」、というものもあります。そうした風潮に違和感を覚える人もいると思います。でも、投資ってそんなに大事なことなのでしょうか?
コントロールできないものに資金を出して目減りするリスクをかかえ、お金が増えた減ったと一喜一憂することに、価値を見いだせない人もいるでしょう。投資のために銘柄を調べたり、時間を使ったりするのはバカバカしいと感じる人もいるでしょう。
たとえば300万円で買った車が、仮に5年後は半分の価値になったとしても、移動が快適になるというバリューを享受することができます。しかし、運用で半分になったとすれば、減った150万円はいったいどういうバリューがあったのか(もちろん、学びに転換するということはできますが……)。
ですから私は、投資をしないという生き方があって当然だと考えています。投資をして増やす人が偉くて、何もせず銀行預金に入れておく人が愚かだ、なんてことはまったくないと思います。あえてリスクをとってまで、お金に働いてもらおうとしなくても、自分が働いて稼いで貯蓄して備えるという方法の方が、十分に現実的な人もいるでしょう。
そうやって、投資という選択肢をなくせば、覚悟して本業に集中できます。本業に邁進して、生活を安定化させようとしますから迷いがありません。
お金を自分のスキルに投資をして打ち込める仕事を見つける
投資で100万円を使う余裕があれば、そのお金を専門学校に投下してプログラミングや語学を学ぶ。短期留学や海外旅行に投下して見聞を広め、自分の価値観を広げる……。それに、本当に打ち込める仕事にありつけたとすれば、それは人生の幸福の多くを手に入れたと同じくらい価値のあることです。だってそうですよね。好きなことをして、顧客に感謝されて、お金までいただけるんです。私のコンサル時代の同僚は、「コンサルが天職だ」と言っています。だから、寝食を忘れて仕事に没頭しています。ゆえに、ヌルく働いている人とは、数年で大きな差が開きます。それは、収入の差になって現れます。昇進すれば自分の決裁範囲が広がりますから、仕事の自由度も増します。そして、ますます人生が楽しくなる。
彼は投資や運用なんて一切興味がありません。彼曰く、「だってコンサルのほうがおもしろいじゃん」とのこと。ですから、彼のお金は全部普通預金です。「口座にいくら入っているかもよく覚えていない」というくらい、お金にも無頓着です。しかも、ひとつの口座にペイオフ上限をはるかに上回る金額を入れています(さすがの彼も、「これはちょっとまずいかなあ」と言っていますが)。
私も一日18時間働き投資のことは考えられなかった
余計なことに心を奪われず、本業に打ち込み練磨すれば、彼のように年収数千万円とまではいかなくても、平均よりも大きなパフォーマンスを出せる可能性が高まります。「そんなのは普通の人には無理」というならば、その人は自分の人生を半分あきらめているということですから、それもその人の自由です。私自身、家にも帰らず仕事に没頭していた時期があります。経営コンサルファーム時代はほぼ毎日タクシー帰りでしたし、起業したてのころは、毎日18時間働いていました。前述の同僚の言葉通り、「投資のことを考えるヒマがあったら仕事をしたい」「仕事以外のことを考える精神的余裕なんてない」という状態でした。
また、自分で働くには限界があるから、老後の蓄えにするには不十分、という意見もあります。不安定な時代ですから、確かに私も、自分の労働力に依存しない収入源を作ることは重要だと思います。
しかしそれも、生涯現役だと考えれば、「老後の蓄え」という概念ごと消し去ることができます。以前の記事『30代の「老後のお金不安」を消すには?』で述べたとおり、生涯仕事を獲得できる自分になれるよう、今からトレーニングしておく。
一生懸命仕事に取り組んできて、気がついたら貯蓄も増えていた、というのも、理想的な形のひとつではないでしょうか。もちろん、いつかは働けなくなるときが来る。病気になることもある。それでも、貯蓄を取り崩しながら生計を立てる期間をなるべく短くすることで、不安を少なくすることができます。
金融機関や投資関連企業は、退職金や老後資金を虎視眈々と狙っていますから、甘い言葉を鵜呑みにしないことです。特に老後からの投資デビューは、損失が出た場合は取り返す時間が少ないですから、なくなったら困るお金で運用するのはやめておいたほうがよいというのが私の考えです。
もっとも、世の中にはセンスのある人もいて、私の会社で開催したFX講座に出席してから、毎日が給料日という、私より稼いでいる人も数名います。ですから、食わず嫌いではもったいない。そこで、まずは試してみる。
しかし、「いろいろやってみたけど、やっぱり自分は投資には向いていないかも」という人は、世の中の風潮に惑わされず、堂々と「私は投資なんてしないよ」と宣言してよいと思います。これでもう、余計な雑音は聞こえなくなります。
ただこれも、誰でもあてはまるというわけではないでしょう。リスク分散のため、収入分散をしておくべき人もいるでしょう。私自身は運用で利益を上げていますから、そういう人のために、投資の魅力を語る仕事もしています。
本当にやりたい仕事だけを選べる自由を獲得するためには
不動産投資は1日1分も時間を使っておらず(ほぼ管理会社任せ)、投資の相場は毎日チェックしていますが、天気予報を確認するようなものです。それでも、これらで毎月100万円以上の利益が上がっています。会社からの役員報酬(給料)や本の印税、講演料などはまた別ですから、贅沢しなければ生活には十分です。こうなると、「本当にやりたい仕事だけを選べる」「お金を理由にあきらめることが少ない」という自由を手に入れることができます。だからこそ、普段は会社の経営、新しいプロジェクト、本の執筆や講演、国内・海外でのジョイントビジネスなど、「やりたいと思ったことだけをやれる」環境にあるわけです。もはや趣味=仕事となり、毎朝目が覚めると「今日は何をしようかな」という感じです。
私がマネーや投資について情報発信する理由は、もちろん依頼を受けての仕事であり、好きなことだからでもありますが、一人でも多く、そんな「選べる自由がある」ことの素晴らしさを知ってもらいたいたいからです。そのためにも、多くの人が陥りがちなリスクも伝え、ヘボ投資アドバイザーや金融機関のカモにならないよう警鐘を鳴らすのも、本コラムの役割です。
ただし、手間隙をかけず継続的に利益が得られるようにするには、やはりそれなりの時間と労力を要します。私も今の仕組みができるまでに6~7年ほどかかっていますし、今でも試行錯誤の連続です。
仕事でもスポーツでも投資でも、かつてマイケル・ジョーダンが言ったとおり、「中途半端な努力は、中途半端な結果しか生まない」ということです。逆に言うと、運用が中途半端になりそうであれば、金融投資よりも自己投資のほうが望ましい、と私は考えています。ここに正解などはなく、「自分はどう思うか」ということです。
【関連記事】