不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

新耐震基準の住宅でも安心してはいけない!

次の発生が懸念される大地震。いつ起きるかは分からないものの、いずれ必ず起きることを前提に住宅の耐震性を考えておくべきです。しかし、新耐震基準が施行された昭和56年以降に建てられた住宅でも、安心してはいけないケースが少なくありません。その理由とは?

執筆者:平野 雅之


今年(2012年)3月に文部科学省から首都直下地震(東京湾北部地震)による予測震度分布図が公表されました。震度7の地域がいくつも点在する可能性が示され、大きな衝撃を受けた人も多いでしょう。続いて、4月には東京都による首都直下地震の被害想定も公表されています。

被災マンション

築浅ながら地震により損傷したマンションは首都圏にもみられる

東京都の想定では、文部科学省のものに比べて東京湾北部地震での震度7地域がいくぶん少なくなっているようですが、東京23区のうちかなりの部分が震度6強に襲われるという予測は、やはり深刻な問題です。併せて東京都が予測した多摩直下地震、立川断層帯地震、元禄型関東地震でも、それぞれ震度7の地域があり、震度6強の地域も広範囲になっています。

東京都によって示された人的被害(死者約9,700人、負傷者約147,600人)や建物被害(約304,300棟)の想定も重く受け止めなければなりませんが、次の大地震が日本のどこで起きるか分かりません。津波対策も含め、首都圏だけではなく日本中が待ったなしの状況に置かれていると考えるべきでしょう。


震度6強と震度7による建物被害は?

木造住宅の場合、気象庁による震度階級の解説では、震度6強で「耐震性の低い住宅では、倒壊するものが多い」、震度7で「耐震性の高い住宅でも、傾いたり、大きく破壊するものがある」となっています。

一方、政府の中央防災会議では、震度6強で「耐震性の低い旧築年木造家屋の場合、2割~7割程度が全壊被害」、震度7で「耐震性の低い旧築年木造家屋の場合、8割~10割程度が全壊被害。耐震性の高い新築年木造家屋でも、2割~5割程度が全壊被害」としています。

耐震性の高い住宅でも、震度7の揺れに襲われればそれなりの被害は免れないでしょう。
震度6強と震度7による建物被害


新耐震基準の住宅でも、耐震性がない!?

木耐協(日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)が今年4月に公表した耐震診断基本データでは、東京都内の家屋(木造在来工法2階建て以下)のうち、旧耐震基準建物の98%、新耐震基準建物でも85%が「耐震性に問題あり」(倒壊の可能性がある)という結果になっています。

これは東京都内の住宅を無作為抽出して調べたわけではなく、あくまでも自ら耐震診断を受けた住宅での結果です。何ら不安を感じていない居住者が耐震診断を受けるケースは少ないため、ある程度は割り引いて考える必要もあるでしょう。しかし、昭和56年(1981年)施行の新耐震基準後に建てられながら、耐震性が十分に備わっていない住宅がかなりの割合に上ることは、しっかりと留意しておくべきです。

一方、マンションにおいては昨年9月に社団法人高層住宅管理業協会から公表された「東日本大震災の被災状況について」という資料で、旧耐震基準と新耐震基準で建物被害に明確な差異はなかったことが示されています。東北6県と関東1都6県の調査で、被災割合は新耐震基準のほうが若干少なくなっているものの、新耐震だから大丈夫だったという結果にはなっていません。

ちなみに高層住宅管理業協会の調査では大破がゼロですが、仙台市の罹災証明に基づく集計では全壊が100棟を超える結果となっているようです。これは判定の目的や基準の違いによるものですが、構造上は大破しなくても実際には住めなくなったマンションがかなりの数にのぼり、新耐震基準の全壊マンションも相当数あるものと考えられます。


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