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希望退職の割増退職金はもらったほうが得するか(2ページ目)

業績が不振の会社は、ときどき希望退職を募ります。退職金が割増になるので、ここで辞めておくのは一見お得のような気がします。実際問題として損得はどうでしょうか。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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個人にとっての希望退職の損得
 

まず、自分の会社が希望退職を募集したとき、個人が考えてみるべきポイントは以下のとおりです。

・この会社は残った社員に対してもさらに給与カット等を行うだろうか
希望退職はリストラや待遇の切り下げの第一歩、ということがあります。たとえば、希望退職で人員整理しても業績は回復せず、残った社員の年収はさらに20%以上下がる、というようなことが考えられます。今の会社がそうなる可能性があれば、現状と同水準の転職を行ったほうが有利ということになります。

・自分の会社員としての能力は転職可能なものだろうか
辞めるか、留まるかを考える分岐点は、やはり自分の会社員としての能力の評価です。そもそも転職先を見つけられる能力がないと自己評価しながら、あえて会社を辞めても仕方がありません。この場合は危機感をもってスキルアップを考えるべきでしょう。自分の能力に自信があるなら飛び出すことは選択肢になってきます。

・自分の体のフットワークはどうか
会社をいきなり辞めたとき、自分と家族に与える影響の大きさを考えてみます。結婚しているなら夫婦で相談するのは当然ですが、子の有無、住宅ローンの有無、共働きかどうか、などにより、「辞めやすい軽い体」か「気軽に動きにくい体」かくらいは整理しておく必要があります。一般には若くて独身のほうが気軽といえます。

・割増退職金でもらった金額と、再就職にかかる時間は見合うだろうか
どんなに割増退職金をもらっても、会社を辞めれば無収入の状態になります。その間も生活費はかかるわけですから、もらった退職金を取り崩していくことになります。たとえば割増6カ月なら基本的に半年で新しい会社を見つけたいということです。希望退職は原則として会社都合で辞めたことになるので雇用保険がすぐもらえますが、それでも今までの生活費の全額を満たせるとは限りませんので甘い判断は禁物です。

一般論として、希望退職を行っている会社の業績は芳しくないため、将来的にも企業の成長の伸びしろが低い可能性があります。ここは冷静に判断する必要があります。そして、「会社に対する義理人情は考えない」ことが大切です。「今まで雇ってくれていた感謝の念があるから」と感謝の気持ちで残る必要はありません。会社と社員は働きに見合うお金をもらう、というただの契約関係でしかありません。変に義理を感じても会社が応えてくれるとは限らないのです。

また、自分に自信過剰にならないようにしてください。「すぐ仕事なんて見つかるさ」と軽く考える人ほど能力は十分でなく、新聞も読んでいない(世の中の状況を知らない)ということがあります。この先年収が下がったとしても、守られている今の雇用をキープする戦略もありえます

そのうえで、「あえて居残る」か「あえて会社を飛び出すか」を考えていきましょう。「あえて居残りつつ転職先を探す」方法もあります。今回の希望退職の期間に間に合わなくても、条件のよい転職先が得られ、退職後すぐ働けるのであれば半年分くらいの割増を見送る価値は十分にあります(転職活動は在職中にやっておくほうが精神的にもいい)。焦る必要はありません

初めての転職は勇気がいるものですが、あわてず、恐れず、乗り切っていきましょう。また、絶対にひとりで抱え込んではいけません。家族、兄弟には今の大変な状況をしっかり説明し、助け合っていくことが大切です。
「希望退職に気楽に応じたけれど、3年たっても、次の仕事がない……」なんて失敗のないようにしてください。

追伸
最後にもうひとつアドバイス。割増部分を取り崩したとしても「本来の退職金部分は基本的に手をつけない」ようにしてください。これは自分の老後に必ず必要になる財産だからです。仮に使うとしても生活費に使うのではなく、住宅ローンの返済など、将来の負担を減らすために使ってください。
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