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子どもの独立を妨げない子ども部屋

数年前「頭のよい子はリビングで勉強する」という本が話題になり、「子ども部屋の在り方」について再考されるようになった。その延長線上で子ども部屋のドアを取ってしまったり、子ども部屋そのものをいらないとする説が見られるようになった。

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

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子ども部屋不要論

子ども部屋は本当に必要なのだろうか。

子ども部屋は本当に必要なのだろうか。

「頭のよい子は個室ではなくリビングで勉強している」という本が出たのが約6年前。有名中学に合格した子どもの勉強方法を調べたら、多くの子どもが子ども部屋を与えられながらも勉強はそこではせずに、リビングやダイニングテーブルでしていたという内容だった。

その本は「有名中学に合格する子どもを育てたい人」には参考になるだろう。でも、そこから「子ども部屋不要論」が飛び出して、広がってくると「ちょっと待って」といいたくなる。

またもう一つの「子ども部屋不要論」のアプローチとして「親子のコミュニケーション不足」もある。西洋風の間取りが定着し子どもに個室が与えられるようになると、今度は「親子のコミュニケーション不足」が問題視されるようになった。そこで子どもを子ども部屋に籠らせないために子ども部屋をオープンな造りにしたり、ドアを設けない説などが出てくる。

 

子ども部屋が原因なの?

「頭のよい子に育てる」「親子のコミュニケーションを取る」。この二つの事から子ども部屋が悪玉として論じられることは「とばっちり」なのではないだろうかと思っている。子ども部屋という個室が与えられようが与えられまいが、それらのことは別な工夫で解決できることではないだろうか。

それでは子ども部屋は本来何のために設けられるのだろうか。多くの親は、まずは子どもが心身共に健康に育って欲しいと願っていると思う。そしてそのように育つような環境を与えたいと考えた時に、子ども部屋はけして「いらないモノ」ではないと思う。

小さい頃に親とずっとべったりしていた子どももいずれ思春期が訪れて、親に反抗し、自立の道に進む。思春期にはしっかり反抗してくれた方が親離れも早い。早ければ小学校の高学年から、中学頃がピークで高校生、大学生でも反抗期はあるだろう。

この時期には子どもにも、許されるならば、自分自身と向き合ったり考えたりできる、1人になれる個室があっていいのではないかと思う。

 

親にとっても子ども部屋はありがたい!?

子どもの思春期・反抗期は、親にとってもエネルギーを要す時で、言うことは聞かないし、危なっかしく、一番扱いづらい時だ。でも、ここはぐっとこらえて成長を見守っていなくてはいけない。親にも忍耐がいる。かわいい子どもでも距離を置きたいと思う時もあるはずだ。親も子も、お互いの精神安定のためには個室という存在はありがたいものだ。

だから私はもし余裕があるなら、子ども部屋はあってもよいと思うし、きちんと1人になれるよう戸や扉などはついていていいんじゃないかと思う。または、小さいうちはオープンな空間でも、自立の時がきたら個室にできるような間取りにしておく。ドアもつけられるようにしておく。

個室を与えると勉強をちゃんとしているか、ネットやゲームばかりしていないかなど気を揉むかもしれないけれど、思春期に入った子どもは半分大人だ。子どものことはもう子ども自身に任せていいのではないだろうか。  

 

子ども部屋は必要最低限でよし

買ったものの、結局物置になっている学習机は多いはず。

買ったものの、結局物置になっている学習机は多いはず。

また、子ども部屋が快適すぎる必要はない。空調も整備され、テレビ、電話、パソコンとこれらが揃うとそれこそ子どもは子ども部屋に籠ってしまう。お互い話をしない時期があっても、子どもの様子を見守ることは必要だ。

したがって居間に家族が集まる工夫をすること、そのために子ども部屋は「最低限のものが揃っていればいい」と割り切っていいと思う。

冒頭で「頭のよい子」の話が出たが、子ども部屋の「勉強机」については熟考してみてもよいと思う。たいてい小学校入学に合わせて買い揃えるが、そこが物置と化すケースは多い。欲しがった時にシンプルな机を購入するか、それこそ必要な時に広げられるちゃぶ台でもいいのではないかと思う。

 

子どもが巣立った後の使い道も考えておく

最後になったが、これから自宅を建てたり購入する人は、長いスパンで考えて間取りを選んで欲しいと思う。子ども部屋の在り方はもちろん、子どもが巣立った後の使い道などを考えながら、自宅の間取りを検討してみるといいと思う。

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