シンプルライフ/シンプルライフの達人

大平一枝さん『もう、ビニール傘は買わない。』(2ページ目)

『もう、ビニール傘は買わない。』このエッセイ集に強く共感したガイド、著者・大平さんにお会いしてきました!

金子 由紀子

執筆者:金子 由紀子

シンプルライフガイド


空を見上げ、風を感じる

コンテナ

ヤフオクで、地方在住の日曜大工好きの方が作って出品していた」という杉板のご み箱を活用。お部屋に合ってる!

大平 結婚して子供が生まれ、少しずつ変わっていった暮らしの中でふと、18歳の時、母が買ってくれて、何となく持ち続けていた折り畳み傘の良さに気付いたんです。そんなにおしゃれじゃないけれど、とても丈夫でしっかりした傘。「私は、こんなにいい傘を持っていたのに、今までいったい何本のビニール傘を買っては捨ててきたんだろう」。それに気づいてから、出かける前に空を見上げ、風向きや湿度を感じ取って、折り畳み傘を持つかどうか決めるようになりました。お陰で、ビニール傘を買わなくなりました。

ガイド ビニール傘を買わなくなって、どう変わりましたか?

大平 季節を肌で感じるようになりました! それまで「ビニール傘を買えばいいや」と、時間優先の生活をすることで、ずいぶん損をしてきたことがわかったんです。空を見上げ、風を感じる暮らしって、楽しいしとっても豊か。


震災の時、困らなかった暮らし方

大平さんが楽しんでいるのは、ストイックにモノを買わないことを説くのでもなく、続けられないほどレベルの高い家事を頑張るのでもない、「ちょっとだけ手間をかけて、自分と家族が心地いい」暮らし。そんな暮らし方は、一見地味だけれど、ひとたび起こった大きな出来事は、鮮やかにその意味を照らし出します。

2011年3月11日の東日本大震災は、被災地ではない首都圏の人々をも強い不安に陥れました。多くの人が買いだめに走り、店頭からは食品が消え、皆が計画停電に右往左往しました。しかし、大平さんは、「特に困った記憶がないんです」。


モノに頼らない、つながりを大切にする暮らし

釜

なんと、キャンプ場に近い古道具屋で700円だったという羽釜。食べ盛りのお子さんのお弁当を作るのに、この一升炊きがちょうどいいそう

大平 うちはがもともと頼んでいた有機農家からの宅配野菜は、途切れることがありませんでした。ごはんは羽釜で炊いているし、家にはキャンドルもごろごろあるので、停電も怖くない。近所のお友達が、「仕事は大丈夫?」と言って、差し入れにパンを焼いてきてくれたのも嬉しかったですね。ごはんさえちゃんと食べられれば、そんなに不安じゃありません。だからあの時、割に落ち着いていられたのかな。

「ビニール傘を買わない」ことに集約される大平さんの暮らしは、自分の五感と手足を働かせ、むやみに便利なモノに頼らず、人とのつながりを大切にする暮らしです。それはいざという時、なくなりも壊れもせず、自分を守ってくれる最強の味方となるのですね。

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