安静がベスト!ではありません
少しでも症状が残っていると運動してよいものか迷うことがあります
日常生活の中で、体のあちらこちらに筋肉の張りや痛みを感じることは、珍しいことではないと思います。久しぶりにスポーツを楽しんだ後日に、なかなか筋肉痛が治まらず、関節にも痛みが広がったように感じたり、デスクワークや立ち仕事で、根を詰めた時に、首・肩・背中に不調を感じたりと、疲労感も加わり「体を動かしたくない~」「しばらくベッドで寝ていたい」と思うかもしれません。
時々こうした症状に見舞われる人や、腰痛や肩こり、背中の張りなどがすぐに自然に回復しなかった人などは、「体を動かすと痛いところに負担がかかって悪くなりそう」「安静にして、なるべく寝る時間を増やした方が良いのでは?」と、日常生活中での動作も制限し、運動もあえて行わないという人もいます。
体を休ませ過ぎてはいませんか?
確かに痛みのある時期に、日常生活での動作も制限したり、運動を避けたりすることが必要なケースもあります。
- ふとした拍子に、腰に激痛が……ぎっくり腰になった場合
- 朝、目覚めてみたら首が動かせない……寝違えたかな? という場合
- 着替えをしようと腕を伸ばしただけで背中に痛みが……背中に痛みが走り動作で痛む場合
- スポーツをして痛めてしまった……痛めて間もない場合
- 転んで足をくじいたり、強打したりで痛みが……外傷による場合
このような、急に痛みに襲われたケースや外力によって痛めてしまったケースでは、腫れがひくまで、または2~3日間を目安として安静が必要になります。怪我の場合は、その程度にもよりますので、医師の指示通りの治療となります。一方で、1週間以上経過しても、筋肉の張りが回復しきれない場合や、動かしての痛みが少し残っているという場合は、体を動かさないことによって、回復を妨げている可能性もあります。
必要以上に体を休ませてしまうと…
痛みの経験は、場合によってはとても記憶に残りやすいことがあります。痛み自体がつらいので、体を動かさないようにするという人もいますが、痛みの再発や、負荷をかける心配により回復が遅れるのではといった懸念から、なるべく安静を心がけたり、腰や肩などの関節を極力動かさないように生活を送っている人もいます。痛みとの付き合いが長期にわたる場合は、無意識のうちにおそるおそる動作をとっていることも。
関節が最大どの程度の範囲動くのかは決まっているのですが、体を必要以上に休ませてしまったり、日常生活での動作や運動を制限し過ぎてしまうと、関節周囲の血流も滞りがちになります。そのため例えば、久しぶりに両手を上に挙げてバンザ~イ、といった動作をしただけでも、腕が思ったよりも挙がらなかったり、肩周りの筋肉が短縮されて伸びないように感じたりします。
筋肉が萎縮してしまう!?
強度の高い筋力トレーニングは避けて少ない負荷から!
腰痛や肩こり、背中の張り感などが長期間続き、慢性化している人が、体を動かすことを避け続けた場合、筋肉の状態に変化が表れることがあります。それは「廃用性萎縮」と呼ばれています。筋肉が萎縮し、本来あるはずの筋力が発揮できず、機能が低下してしまいます。機能が低下することで、筋肉への血流は滞りがちになり、姿勢を支えるにも疲労がたまりやすくなります。
働きが低下している部分を他の部位で補おうとするなど、全身における筋肉の機能的なバランスも乱れ、姿勢に変化が出たり、結果、関節への負荷が増す可能性もあります。そうしたことから、肩関節痛や手首の痛み、股関節痛や膝痛などへつながるケースもあります。
筋力低下の回復は焦らないことがポイント
久しぶりに運動をした時に、体が動かしにくく感じたり、筋肉疲労を感じやすくなっていたりした経験はないでしょうか。体を動かすことを避け、筋肉を使わなかった場合には、約1週間ほどで、筋力が10~20%くらい低下すると言われています。筋力が低下すると、筋力を取り戻すためのトレーニングも、早々に疲れてしまい、長続きしない場合もあります。
廃用性萎縮を予防するためには、体の動かし方を工夫してみましょう。痛みのあった部位を動かそうとすると、恐怖心や心配が頭をよぎり、躊躇してしまうかもしれませんので、体の動かし始めは、部分的な動きではなく、ウォーキングなどの全身が温まるようなもので良いと思います。その後は、痛みに関わる部位に対して、ストレッチをしたり、筋肉を軽くほぐしてみたりと、少しずつ刺激を入れていきます。
例えば、肩周辺であれば、普段動かさなかった範囲よりも、少し大きく腕を動かしてみるなど、関節周りを意識した動きも取り入れていきます。筋力アップのための筋力トレーニングは、物足りない程度の軽い負荷から始めましょう。筋肉がやせ細ったように見える部分をもとに戻すには、やはりコツコツと時間をかけた日々のトレーニングが必要になりますので、張り切り過ぎずに、楽しんで続けることができるようにすることがポイントです。