自分の老後には年金制度は崩壊しているのか
「国の年金なんて将来どうせもらえないのでしょう」と思う人があまりにもたくさんいます。特に若い人ほどそう信じる傾向が高まるようです。確かにニュースを見ていると、年金制度の破綻は確実のような気がしてきます。しかし、年金制度・社会保障制度を専門としている私から言わせれば、年金制度は崩壊も破綻もしないことはほぼ確実です。むしろ、年金制度が崩壊することが難しいくらいです。今回は、国の年金制度は確かにもらえる(でも自力での準備は必要)という話をしたいと思います。
もらえる理由1)国は制度を破綻させない方が得だから
年金制度が破綻しない最大の理由は、国は年金制度を破綻させないほうが得だからです。国は、国民の最低限度の生活を保障する義務があり、どうしても生活を維持できない場合は生活保護を支給します。これは全額税金でまかなわれます。年金制度については、税金からまかなう部分(国民年金の半分)と、保険料でまかなう部分(国民年金の半分と厚生年金のすべて)で構成されています。もし、国が年金制度の破綻を宣言すると、国は年金制度での支払いをストップすることになりますが、代わりに生活保護の給付責任を負います。生活保護は個人の手元資産がなくなってから支給開始することになるとしても、いつかは年金生活者のほぼ全員が生活保護を請求することになるでしょう。
生活保護の給付水準は、おおむね国民年金の金額と同じです。厚生年金の水準まで保障しないとしても、全額税金で20兆円近い巨額の財源が必要になります。実は、国にとっては年金制度を維持するほうがどう考えても得なのです。そして、ここでいう得、というのは「現役世代にとって得」という意味でもあります。破綻させたほうがむしろ、現役世代は損をする可能性があるのです。
もらえる理由2)財政的には破綻しない仕組みにしてあるから
2つめの理由は「破綻しない仕組みになっているから」です。実は国の年金水準には、自動調整弁のような仕掛けがセットされているのです。まず、保険料を18.3%になるまで引き上げるという計画は実行中です。また、年金給付について自動的に引き下げる仕組みもすでにセットされています。現状においてはインフレがなかったため未実施ですが、年金給付と保険料負担のバランスが取れるように調整する仕組みはすでに織り込まれています。これは、破綻するリスクが近づけば、制度が破綻しないように年金をスリム化する自動調整の仕組みがあるということです。強固な仕組みというよりは、しなやかな仕組みになっています。簡単に言ってしまえば、年金財政が厳しくなれば年金水準をそれに合わせて引き下げてしまうのですから、実は国の年金は破綻したくても簡単に破綻できないような仕組みといえます。
最近ではむしろ、予想より若干高くなっている出生率により、当初予想より年金水準を下げずにすむのではないか、と見込まれているほどです。ますます破綻リスクは低くなっているといえます。
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