子育て事情/ランドセルと小学生

日本の小学校でランドセルが主流なワケ

このエッセイは「子育て事情」ガイドの河崎環、藤原千秋の2人が、子育て関連のテーマについて往復書簡形式で綴るシリーズです。毎月1つのテーマで、日本~ロンドンの時差と距離を越えて語り合います。今回は「ランドセル」の4通目。

河崎 環

執筆者:河崎 環

子育てガイド

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ランドセルのある風景は変わらない

ランドセル

ランドセルの基本コンセプトは昔からほとんど変わらない


復啓
フジワラさま

産婦人科医も助産婦さんも、出産直後に「あとまだ2~3人産めそうな余裕っぷりですね」と太鼓判を押してくれた(?)安産体型、長身の上に重心の低い「壁女」とはワタシのことか、どうもカワサキです。長身で手足の細長いフジワラさん、もしかしてジーンズの裾を切って履いたことないでしょう! フジワラ家の3姉妹も、きっとママに似て足長美人に育つのでしょうね、って、何だか悔しいわぁ。

さて、フジワラさんのランドセルなるものへの静かな疑念、大変によくわかるのです。だって、耐久性や重さや防水性など、こんなに素材技術の発達した現代、通学に用いるバッグがアレでなければいけない理由が一体何処に?

海外在住ながらニッポン大好きのワタクシ、時折日本のネットスーパーを覗いて「ほほぅこんな新製品が」などとリサーチという名の暇つぶしをするのですが、上の娘のためにとランドセルを血眼で探したあの日から約10年、いまだに新製品は約1キロの重量を誇っています。なんかね、重さを見ただけで肩が凝ってくるんですよ、アラフォーってつらい。

重さが10年前と変わらなくても、色・デザインのバリエーション、これはきっと10年前とは比べ物になるまいよと見てみると、これまたそんなに変わらない。パイピングとかステッチの色とかリベットのデザインとか、「ナントカのはね」(笑)とか、ディテールの仕様を競うことはあっても、基本コンセプトは私が小学生だった30年以上前から、何一つ変わっちゃいません。

あー日本人ってホント、ドラスティックな変化でなくマイナーチェンジを好む民族なのね、政治も経済も社会もランドセルも一緒なのね、と思ったのですが、いやしかしランドセル業界からすれば「いやウチの商品のこの新素材はですね」とか「このパーツは特許を取っていまして」とか、たゆまぬ研究開発努力が注ぎ込まれているはずなのです。

んで、どうやらランドセルと桜の花は日本人のお入学の風景に刷り込まれていて、もう他の代替品は考えようもない、あるいは代替品は結局売れていないので生産が続かないのではないかと私はにらむのです。ランドセルって安いものではないですし、おじいちゃんおばあちゃんが記念として孫に買ったりするでしょう。お入学の姿って、本人や親はもちろんですが、ジジババや親戚への「大きくなりました」的涙腺緩ませアピールでもあるじゃないですか。で、その姿は伝統的定型である必要があるんですよ、上の世代に向けて発信されるものであるがゆえに。お入学を前にした消費者からすると、代替品すなわちニセモノ、そんなの日本の春の風景じゃない、桜とランドセルは春の季語そして逆もまた真なり、という心理的反発、あるいは遠慮があるのではないか。

結局、学校で指定されているわけでもないのにいまだにランドセルが定型から進化しないというのは、需要ゆえなのですよね。新1年生の親(やジジババ)が、結局ランドセルを選んでいるんです。でも、都会の小学生には少しずつ「定型」をはみ出す生徒さんも増えているのでしょう? 海外のしっかりして軽いリュックサックとか。そういう実例が牽引する形で、少しずつランドセル事情も「マイナーチェンジ」的に変わっていくのかもしれませんよね。

ちなみに、"MOE"とも関わるかもしれませんが、海外の日本人学校では、ランドセルを背負って通う子どもたちの姿が見られます。週末だけの日本語補習校でも、普段は現地校に通う「ハーフ」のお子さんがその日だけはランドセルを背負ってきたりするんです。そんなの指定されていないんですが、本人達は自発的に日本からランドセルを持ってきて、背負うんです。多分ランドセルって、「日本の学校」の象徴的存在、日本人のアイデンティティとして背負われる時もあるのでしょうね。海外で見るとびっくりしますが、本人達は妙に誇らしそうにしている、そんなランドセルの風景もありました。

再拝
カワサキ 




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