ベストチョイスは17インチのコンペティツィオーネ
スプリントとコンペティツィオーネには最高出力170psを発生する1.4リッターターボ マルチエアエンジンと乾式デュアルクラッチトランスミッションのTCTを搭載。クアドリフォリオ ヴェルデには235psの1.75リッター直噴ターボエンジンに6MTを搭載した。1.75リッターエンジンは往年の名車「1750」に由来する (写真はコンペティツィオーネ)
16インチタイヤでノーマルサスのスプリントは、確かに路面からの突き上げもソフトで、アスファルトの荒れた市街地では一瞬、乗り心地がいいと錯覚してしまうが、中高速域以上では足元が少々だらしなく、ふんばりきれない場面が多い。特に、ワインディングロードでは粘りが足りず(とはいえフツウのCセグコンパクトカーに比べれば十分勝るが)、キレ味もフツウ。初期レスポンスに優れた上級2グレードと比べて、大きな弧を描いてコーナリングをまとめあげるという感じ。もっとも、アルファロメオといえば本来、イタリアではスポーティだがちょっとやぼったいフツウのクルマ、だったりするが。
いずれのグレードも、同じパワートレインで、そういう意味では同等のパフォーマンスをもつが、パワフルな1.4リッターエンジンゆえ、それなりにシャシーを締め上げた仕様の方が存分に楽しめると思う。ちなみに、TCTのデキは上等で、シフトチェンジはウルトラスムース。特にレッドゾーンにおけるシフトアップの電光石火な速さには、最新フェラーリ風味さえ漂っている。
最上級のクアドリフォリオに乗り換えて、ダイナミック(d)モードにすれば、こんどはあわてふためくほどパワフルだ。しかも3ペダルだから、しばらくしっちゃかめっちゃかに操作するハメになる。シフトフィールは極めてスムースかつキマリよく、トルクフルなエンジン特性と相まって、ゆっくり走っているかぎり、煩わしさもほとんどない。ハンドル/シフ/ペダルなど、すべての操作系の調子が揃っているから、非常に気分よくドライブできる。ただし、右ハンドル仕様であるため、クラッチペダルを踏む左足がセンターコンソール側壁に当たってしまうのが難点か。
18インチもよく履きこなしていると思う。17インチとほとんど変わらぬ乗り心地が出ている。わずかなステアリング操作にもきめ細やかなレスポンスをみせる。けれども、ちょっとハードに攻め込むと、頑丈なボディが悲鳴をあげる場面もあった。シャシーがわずかに勝ってしまう。17インチではそれがなかったから、やっぱり総合的にはまん中のグレード、となるわけだ。
空気の出し入れを研究しつくした両エンジンについて言えることだが、4500回転あたりの雑味だけが、気になった。
いずれにせよ、1年以上遅れてやってきたとはいえ、その完成度はいまだ一級レベル。さすがにフルモデルチェンジしてしまった1シリーズには及ばないまでも、それに近いドライビングファンと、間違いなくゴルフ級のしっかりとした車体&シャシーを手に入れた。
ドイツ車の寡占が続くセグメントで、ジュリエッタという、魅力的な名前をもつイタリアのクルマが反撃の狼煙を上げる。その手法はといえば、ドイツ車の流儀というあたり、ちょっとしたアイロニーだが、それが新しい時代のアルファロメオということで、実をいうと、159以来のベクトルなのだった。