古くからある市街地や郊外の住宅地では、田畑の畔道(あぜみち)や畑道(はたみち)、あるいは自然地形の歩きやすい部分が後に道路として発達した例も少なくありません。また、点在する家と家の間を人々が行き交う間に、成り行きで形成されていった道路もあるでしょう。
自動車などの交通手段がなかった時代には、生活道路が真っすぐであることや幅の広さはあまり重要ではなく、曲がりくねった状態の細い街路でもさして支障はなかったはずです。また、昔は敷地境界についての意識も薄く、そこに面する敷地もいびつな不整形のことが多いものです。
ところが現代では、そのような街路に囲まれた敷地を利用するときにさまざまな問題が生じるばかりか、細い路地が複雑に入り組んだ区域に多くの住宅が密集している場合には、防災上の大きな危険性を伴います。
主にそのような「古い時期に住宅地などが形成された区域」で実施される土地区画整理事業ですが、この事業が施行されている間に、事業対象となっている住宅や土地を売買するケースも少なくありません。
今回は土地区画整理事業(土地区画整理法)の基本的な概要と、事業区域内の土地を購入するときに気をつけたいポイントなどを整理しておくことにしましょう。
土地区画整理事業とは?
土地区画整理事業とは、都市計画区域内の土地において宅地の利用増進および公共施設(道路、公園、広場、緑地など)の整備改善を図るため、土地の区画形質の変更および公共施設の新設や変更をする事業です。事業の施行区域全体の面積は変わらないなかで、道路の新設や拡幅、公共施設の整備などが実施されますから、それぞれの敷地はその面積をある程度狭くしたうえで再配置されます。これを減歩(げんぶ)といいます。
また、同じく減歩によって保留地が生み出され、これを第三者に売却した代金が事業の費用に充当されます。
土地区画整理事業施行前の従前の宅地に対して、施行後に一定の宅地が割り当てられますが、これを換地(かんち)といいます。
事業の施行者は、換地処分をするための換地計画を事前に定めますが、計画にあたっては換地が従前の宅地と、その位置、地積、土質、水利、利用状況、環境などにおいて照応するようにしなければなりません。
敷地面積は減少するものの、土地の利用価値が上がることで敷地全体の評価は変わらず(または上昇し)、かつ、利用面においても従来と変わらないことを原則としていますが、「事業施行区域内の全員がすべて平等」とすることは極めて困難です。
それぞれの宅地において不均衡が生じると認められるときには、清算金によって解決が図られますが、これには徴収される(支払う)場合と交付される(受け取る)場合があります。
なお、自治体や国土交通大臣、都市再生機構、地方住宅供給公社が施行する土地区画整理事業において、(事業に起因して)施行後の敷地の価値が減少した場合には、その差額に相当する金額が減価補償金として交付されます。
土地区画整理事業の施行者は?
土地区画整理事業はその施行主体によって、個人施行者、土地区画整理組合、区画整理会社、都道府県および市町村(地方公共団体)、国土交通大臣、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)、地方住宅供給公社に分けられます。また、「農住組合法」による農住組合および「密集市街地における防災街区の整備の促進に関する法律」による防災街区計画整備組合が、その目的に従って施行する土地区画整理事業の場合にも、土地区画整理法の規定が適用されることになっています。
施行者はそれぞれ都道府県知事から施行の認可または組合設立の認可(都道府県施行などの場合は国土交通大臣の認可)を受けて事業を進めます。
このうち、土地区画整理組合は区域内で所有権または借地権を有する7名以上が定款や事業計画を定めて組合設立の認可を受けますが、その組合員となるのは施行区域内の宅地について所有権や借地権を有するすべての者です。
また、業務の大半を民間デベロッパーやゼネコンなどに委託した場合(業務代行方式)でも、その施行者はあくまでも組合とされます。
土地区画整理法で規定する区画整理会社は、区域内で所有権または借地権を有する者を株主または社員とする株式会社です。
また、地方公共団体や国土交通大臣、機構、公社が施行する土地区画整理事業は、都市計画事業として位置付けられます。
仮換地の指定とは?
土地区画整理事業が始まり、宅地の造成工事や道路など公共施設が整備されていくのには相当の年月がかかります。しかし、換地処分が行なわれるのは計画区域の全部について工事が完了してからであり、換地処分よりもだいぶ前の段階で、支障なく使える状態となる土地も数多く存在するでしょう。
このようなときに指定されるのが仮換地(かりかんち)で、原則として換地計画に定められた換地予定地と同一の土地であり、将来的に換地処分により換地として確定します。
仮換地が指定されると、従前の宅地について使用する権利(使用収益権)を有していた者(所有者、借地権者など)は、仮換地について従前と同様の使用収益ができるとともに、従前の宅地については使用収益ができなくなります。
ただし、換地計画の内容によっては、従前の宅地と仮換地(換地予定地)がほぼ一致し、敷地の周囲が少し削られるだけというケースもあります。
≪土地区画整理事業施行区域内の土地を購入するときのポイント…次ページへ≫