谷中式フル・ハーフマラソンタイム相関算出法
これまでご紹介したトレーニングメニューについての解説の中で、フルマラソンの目標タイムからハーフマラソンの目標タイムを出す方法(あるいは逆にハーフマラソンのタイムからフルマラソンのタイムを想定する方法)を知る必要があると思われたと思います。今回はそのフルマラソンとハーフマラソンの相関したタイムの算出方法をご説明します。これについてはこれまでも幾つかの算出式が発表されてきました。しかし、フィニッシュタイムが同じでもランナーがベテランなのか初マラソンかで数式に当てはめるとかなりの誤差が出、納得できる誤差に納まる数式に出会えませんでした。私はハーフ×2+10分前後という簡単な式で計算していたのですが、この式は3時間20~30分ぐらいのランナーに当てはまるのですが、それより早いと10分をもっと減らさなければならないしそれより遅いと10分以上にしなければならず不具合でした。良い計算方法はないかと常々考えていたのですが、以下の数式で計算してみたところかなり現実に近いタイムを算出できましたのでご紹介します。
ただし、マラソンではかなりの揺れ幅が生じるものであり、途中で歩きが入りがちな6時間、7時間というランナーですと極端に食い違うということがあるかもしれません。また、中距離が専門種目のランナーも距離が長くなるほど急激にペースが落ち込みがちであり、この数式によるタイムから離れる恐れがあります。マラソン経験のない方は、少なくとも中間点まではこの数式から導き出されるペースより早くならないように走ることをおすすめします。マラソン経験が数度以上ある方には、妥当な目標タイムを示せると思います。
フルマラソンのタイム(小数点以下は60進法を10進法に変えます。例えば4時間30分=4.5 3時間20分20秒=3.38888888…)=x
ハーフマラソンのタイム=h
とします。そうしますと、xとhの関係は
x=h×2+xの二乗÷60
となります。
ハーフマラソンの記録の2倍にフルマラソンであるが為に遅くなるタイムをプラスするわけです。速いランナーは加えるタイムが少なく、遅いランナーは増えるのは当然なのですが、これが一次方程式のように直線的に増えません。二次曲線を描くようにして増えるのです。そこで、加えるタイムを「ある数字の二乗」としました。「ある数字」は遅くなるほど増やさなくてはならないのでフルマラソンのタイムとしました。しかしそれでは数値がちょっと大きすぎます。減らさなければならないのですが、どのくらい減らせばよいのか、フルマラソン3時間から3時間30分の完走を前提に試したところ60で割ると丁度よいと思われました。この数式で世界最高記録から5時間完走まで試算してもかなり実際例に近い数値が出せましたので、一般ランナーなら問題なく使えるのではないかと考えます。
この数式によってハーフのタイムが分かればフルマラソンのタイムを想定でき、フルマラソンの目標タイムを参入すればハーフマラソンで必要なタイムを算出できます。以下のような数式になりますので、エクセルにでも計算させてください。
【ハーフのタイムからフルマラソンのタイムを想定する】
x=h×2+xの二乗÷60
xを算出するには2次方程式によらなければなりません。
0=xの二乗−60x+120h
これを高校生時代に戻って因数分解します。が、たいへんなのでエクセルに計算してもらいます。
エクセルでの入力式(二次関数なので正負の解がありますが正のみ必要なので)
A1セルに1
A2セルに-60
A3セルに120×ハーフマラソンのタイム(10進法で。1時間30分は1.5、分の単位を60で割る)
と入力し、空いたセルに
=(-A2-SQRT(A2^2-4*A1*A3))/(2*A1)
と入力(この式をコピーペーストして)すればxの値、すなわちフルマラソンの想定タイムが出ます。ただし、10進法ですから60進法に戻してやらなければなりません。
xを解く数式をセルA5に置いたのなら
60進法に変換するセルの式は
=INT(A5)+MOD(A5,1)*60/100
となります。
例えば、ハーフマラソンが1時間30分の時は、10進法にすると1.5時間ですからA1の数値は120×1.5で180となります。
フルマラソンの予想タイムは、10進法では3.16718427時間、60進法では3時間10.0310562分となります。小数点以下は秒数が10進法で示されています。小数点以下を60倍すると秒数になります。すなわち1.86秒、約2秒ですから、3時間10分2秒と計算されます。このタイムを42.195で割った値がイーブンペースで走るための1kmあたりの所要時間です。
【フルマラソンの完走タイムに必要なハーフマラソンの走力を算出する】
これは簡単です。
h=(60x-x^2)/120
となります。設定するフルマラソンの完走タイム(10進法にします。4時間15分なら4.25)をセルA1に入れるとして、エクセルに入力する数式は
=(60*A1-A1^2)/120
です。10進法の数値ですから例によって60進法に変換するには、
=INT(A5)+MOD(A5,1)*60/100 (上記の数式をセルA5に入れた場合)
となります。
例えば、目標完走タイムを4時間45分とすると、ハーフマラソンのタイムは2.186979167時間(10進法)で、60進法では2時間と11.21875分、すなわち2時間11分13秒となります。この時間を21.0975で割った値がハーフマラソンをイーブンペースで走るための1kmあたりの所要時間です。
以上ですが、コンディションは日々変動するものです。ましてマラソンとなると天候や地形の変化もそれぞれです。ここで算出した数字はあくまでも目安とすべきです。ボルグスケールも知覚を計器に使っているわけですが、アスリートも自分のレベルは自分の知覚に従うのがもっとも合理的だと私は思っています。調子が悪いなと思ったら速度を落とす、良ければ早めてもいいでしょう。ただし、フルマラソンは先が長いレースです。調子が良くても30kmまではこの数式から算出されるペースを上回らぬ速度が良いでしょう。
30kmを過ぎて調子が良ければそこからはペースをアップしましょう。残りの距離と残された力を勘案し、43kmを走るくらいのつもりで力を使います。
全力を出し切ってようやくのことでフィニッシュするよりも、まだラストスパートに余力を残しフィニッシュを駆け抜けてまだ力が余っているくらいの方が良い記録になるものです。