国際結婚/国際結婚アーカイブ

ハーグ条約から学ぶ国際結婚の心構え(2ページ目)

日本もハーグ条約に加盟するという動きが話題になっています。それは法的にはどのようなことなのか? 国際結婚カップルが当然知っておくべきこととは何か? この問題に詳しい弁護士の松野絵里子先生にお話をうかがいました。

執筆者:シャウウェッカー 光代

  • Comment Page Icon

国際裁判管轄

国際裁判管轄とは、国際結婚カップルが離婚する時、どの国の裁判所でこの離婚の件を裁判できるのかについて定められたルールです。

夫婦の双方が日本に住んでいる場合には、日本の裁判所に管轄が認められますので、離婚調停を起こすことができます。しかし、夫婦の一方が外国にいる場合、原則として、被告(訴えられる方)がいる国の裁判所で裁判を行うことになっています。つまり、自国に帰ってしまった外国人配偶者に対して訴訟を起こす場合は、原則として、日本の裁判所には管轄がなく、相手の国に管轄があるということになります。したがって、その国で裁判の手続きをしなければなりません。

ただし、例外があります。原告(訴える方)が遺棄された場合、被告が行方不明の場合、その他これに準ずる場合は、日本に管轄があるとする判例がありますので、日本で裁判ができます。この遺棄というのはケースバイケースで認められますので、相手が海外にいるから日本で離婚できないとあきらめないで、きちんと専門知識のある弁護士に相談するとよいでしょう。海外での離婚はかなりの負担になります。

国際離婚の準拠法

準拠法とは「ある法律関係に適用されるべきものとして選択された法」(weblio辞書『三省堂 大辞林』)のことです。

国際離婚の場合、関係する国が複数あるので、どの国の法律によって離婚の手続きができるのかが問題になり、それにはルールがあります。日本の法律で離婚できるとは限らないのです。その適用される法律が「国際離婚の準拠法」です。しかも、そのルールが国ごとに決まっているので複雑です。

国際結婚カップルは、少なくとも夫婦双方の母国である2つの国の法律が、その婚姻に関わっています。また、夫婦がそれぞれの母国以外の第3国に住んでいるとしたら、その居住国の法律も関係してきます。

日本の裁判所で問題になる場合には、国際離婚の準拠法は、次のように定められています。(他の国でのルールはまた別にあることに注意)

(1) 夫婦の本国法が同一であるときには、その法律
外国に住んでいる日本人同士の夫婦が離婚する場合には、日本の法律が適用されます。
また、たとえば、日本に住んでいるブラジル人の夫婦ならブラジルの法律が適用されます。

(2) 同一の本国法がない場合、夫婦の常居地法が同一である時には、その法律
日本に住んでいる外国人と日本人の夫婦が離婚する場合には、日本の法律が適用されます。夫婦が外国人配偶者の国に住んでいる場合は、その国の法律が適用されます。

(3) 同一の本国法及び常居地法がない場合、夫婦に最も密接な関係のある地の法律
外国人と日本人の夫婦が第3国に住んでいる場合、その夫婦が住んでいる国の法律が適用されます。
日本人が日本に住み、外国人配偶者が日本以外の国に住んでいる場合、また、外国人配偶者が日本に住み、日本人が日本以外の国に住んでいる場合も、日本が最も密接な関係がある国とされ、日本の法律が適用されます。

国際結婚夫婦の場合は、(2)か(3)のどちらかに該当するというわけです。(もっとも米国では州ごとに家族法が異なるので、米国のどの州の法律が適用されるのかという、またまた複雑な問題が出てきてしまいます。)

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 7
  • 次のページへ

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます