女人禁制の山の里
山ガール、釣りガール、囲碁ガールまで出現している昨今。これだけ女性が男前に楽しむこの現代で、女性禁制の場所は相撲の土俵だけではありませんでした。奈良県天川村(てんかわむら)にある大峯山(山上ヶ岳)がそうです。古来、霊山とされた山々は明治時代に女性解禁になりましたが、この山だけは今現在も変わっていません。
高い山と深い谷に囲まれた天川村は、神々が住む高天原を指すといわれる天ノ川という名称が川につけられ、世界遺産となった「大峯奥駈道」がはしり、日本三大弁天の一つに数えられる「天河大辧財天社」があります。パワースポットなんて気軽に呼べない、そもそも住むことがはばかれた聖なる場所。さあ、神秘に満ちた天川村へ出掛けましょう!
修験者の秘薬?!
天川村へは大阪や奈良方面から約2時間半。近鉄吉野線の下市口駅から小型バス(奈良交通バス)に乗換えて1時間ほど揺られながら向かいます。細い山道を登るのでレンタカーを借りるにも小型車の方がベターです。下市口付近を過ぎた頃から電柱には難しい文字が書かれた看板が出始めます。「陀羅尼介」。「だらにすけ」と読む胃腸に効く和漢薬で、名前の由来は僧侶が陀羅尼という経を唱える時に眠気防止に口に含んでいたことから。私は旅の常備薬としてカバンにしのばせています。静けさが心地よい一軒宿
今晩の宿は村の中心に位置する川合地区の「せせらぎの宿 弥仙館」へご案内しましょう。宿は和室が10室の小さな宿。切り盛りする畠中さん一家が優しい笑顔で出迎えてくれます。深谷川に面して立つ部屋からは、夏は爽やかな緑を、秋は鮮やかな紅葉が眺められ、せせらぎの音に包まれる館内には穏やかな時間が流れています。部屋へ荷物を下ろしたら、聖域を散策してみることにしましょう。標高が600メートルありますので寒さ対策は忘れずに。次のページでは温泉街へ