ディナーコースより御紹介
それでは、本場ライオールから来日したミシェル・ブラス始め、現地スタッフ&洞爺スタッフによる来日特別フェアのディナコース(2万9400円)から御紹介します。
・コック / ムイエット
コック / ムイエット
シェフの幼い日の思い出の中にある、ママが作ってくれたコックとムイエット。この愛に満ちた思い出の一皿を食べ手と共有するために、料理の下にはエッセイが書かれています。儚いほどに滑らかで温かいコック、そして蕎麦の香り漂うムイエットは、どこか懐かしさすら感じさせる味わいで、食べ手の心をも魅了していきます。今まで私は料理は人だと思っていましたが、この料理を食べて料理の原点とは人生そのものだと気付かされましたね。
・ひとくちで……
ひとくちで……
アミューズ・ブーシュは、スプーンに乗った一口サイズの料理が3種類登場です。鯖と紅芯大根、鹿のコンソメのジュレ、野菜盛り(ブロッコリーとニンジン、そのムース)、と3種類ありましたが、個人的に特筆したいのが、北海道らしく蝦夷鹿のコンソメのジュレ。これが実に濃厚で、口に入れた瞬間にふわりと鼻腔に巻き上がる鹿の香りが素晴らしい。
・現在では“クラシック”
ガルグイユー
ミシェル・ブラスのスペシャリテ「ガルグイユー」。北海道の農家さん達が心を尽くして栽培された野菜やハーブ、そして発芽豆を数十種類もの数が盛り込まれた一皿です。それぞれの素材には適した火入れが施されており、コルザ(なたね)の香りをつけた牛乳のドレッシングと共にいただきます。
今や様々なレストランがガルグイユのような野菜料理を出すようになりましたが、単に火入れ調理しただけの野菜盛り合わせと、ミシェル・ブラスのガルグイユとの間にある圧倒的な「差」は、皿の上の料理が、その地に根付いているかどうか、なのだと食べていて感じましたね。
ガルグイユ(またはその派生系料理)にとって大事なのは、使う野菜の数ではなくて、その野菜の生まれた場所と店とのリンク作用。京都なら京野菜、大阪なら浪速野菜、北海道なら道産野菜、オーブラックならオーブラック、と地の食材への愛と敬意の表れが、ガルグイユの魅力なのでしょう。
皿の上には美しき北海道のテロワールに包まれた大地の恵みが拡がり、皿の下には北海道の大地に根付く天と地と人の繋がりがある。大きな窓から洞爺の景色を眺めながら食すガルグイユー(北海道ver)は、それぞれの素材を噛みしめる度に、テロワール溢れる素直な素材力が五感に優しく伝わっきて、北海道の自然と人に感謝しながら食べずにはいられません。
・北海道で水揚げされた
魚料理はヒラメ
ヘーゼルナッツと共にポワレしたヒラメの身は、脂の乗りも抜群ですが、ヒラメの真味を存分に引き出した仕上がりに驚きがありましたね。北海道の海の幸だからこそ、とも言える鮮度と質の高さを魅せつけられた極みのヒラメ料理。また、添えられたセベット(ベビー・オニオン)やユリネ、パンプルネルも極限まで真味を引き出した記憶に残る味わいでした。
・果物&野菜の歓び
果物&野菜の歓び
果物×野菜×魚介で表現された一皿は、バターでポワレしたバターナッツ(瓢箪カボチャ)の上に、酢で引き締めた「あかねリンゴ」と、ボタンエビ。それに添えられるソースはプルーンの芯油のヴィネグレットという構成です。
バターナッツの持つ野菜の静かな甘味、あかねリンゴが持つ果物の円やかな酸味、ボタンエビの持つ魚介の程よい旨味が三位一体となり、舌の上で畳み掛けてくる逸品。構成力と調和がハイレベルに成り立った見事なる完成度でした。
・すべて秋で
すべて秋で
続いてはホウレンソウ、オルジュ(大麦)&トリュフのクリームに、後から赤頭巾南瓜の温かいブイヨンソースを注いだ一皿が登場。見た目の鮮やかさもさることながら、トリュフの馨しい香りが甘く囁くように寄り添う赤頭巾南瓜のブイヨンと融合し、未知のテイストを生み出しているのです。まさにフランスと北海道のマリアージュが奏でるセレナード。
次ページからは、
コース料理後半の料理を御紹介していきます。