大好きなモノと暮らすことの大切さ
サロンで見つけた「名言」。「いい器は一器多用 いろいろに使って美味しく食べよう 食器棚を満杯にしないですむ しかも楽しい」
便利だから、経済を成長させるからと、次から次にモノをつくり、ほしいままに使い捨ててていけば、いずれ資源は枯渇し、国土はゴミの山になる。よい手仕事が消え、暮らしに美しさはなくなる。そうならないためには、いいモノ、気に入ったモノを少しだけ、大切に使っていこう――。
「一客1万円のお椀を使おう」
本物と模造品の漆椀。「本物の漆の椀と 漆器に見えるだけの椀はこんなに違う 素材と断面と塗師の心がそろった時 使い心地よく堅牢な本物の椀が生まれる」
『割りばしから車まで』の一節「うるしの椀・その使用料一回一円也」は、心にかなうモノを使うことが、暮しの質をどんな風に上げるかを教えてくれます。
同じお椀の形をしていれば、お椀としての用はなします。それならば、値段は安い方がいいように思うけれど、安いお椀は早くダメになる。いいお椀は高価だが長持ちするし、塗りなおしもきく。一回当たりの値段は、どのお椀も一円。同じ一円なら、毎日を心地よくしてくれる、いい器を使った方が、人生が楽しくなる――。
ここで大切なのは「一回一円」という値段ではありません。「人生が楽しくなる」ことなのです。
いいモノはいい人を、いい社会を作る
岩手県大野町(現洋野町)で実現した、地元の木を使った学校給食の器。
秋岡さんは後年、東北をはじめ日本各地の過疎地域の木工による産業振興に尽力します。岩手県大野町、北海道置戸町における、地元の木を生かした木工の試みは今もよく知られています。風土を生かした、ほんもののものづくりを実践すること。使う人が幸せになるものは、作る人も幸せにすること。それこそが、経済のためではなく、人間のための経済を回していくことを、私たちに伝えてくれました。