シンプルライフ/シンプルライフの達人

秋岡芳夫に学ぶシンプルライフ(2ページ目)

生涯かけて「モノ」と向き合った工業デザイナー、秋岡芳夫。没後14年を経て、そのメッセージが、311以降を生きる日本人に伝えるものとは――。

金子 由紀子

執筆者:金子 由紀子

シンプルライフガイド

寸法と重さで選ぶ「身度尺」

書斎

1階に再現された、秋岡さんの書斎(窓の風景は自宅の庭の写真)。使いこまれたモノたちがかもし出す心地よい空間

最もわかりやすいのが、秋岡さんの提唱していた「身度尺(しんどじゃく)」という概念。日本の食器や家具、生活用品の寸法を例に、「人間の体の寸法に作ったものは使いやすい。体の寸法や体のうごきに合わせてものを作ることを、”身度尺”で測って作ると言う」(『暮しのためのデザイン』)と、日本人が、長い歴史の間で培ってきた独自の規格の使いよさを説明しています。器の重さにも、持ったときの扱いやすさ、心地よさによって、最適な重量があるそうです。
 

身度尺に従って選んだモノは、使いやすく愛着が湧く

椅子

秋岡さん愛用の椅子。実際に座れる展示もあり、滅法座り心地がよい

ガイドは、秋岡さんのすすめる「日本人の体格と暮らしに合うダイニングテーブルの高さは60~62cm、椅子は座面の広い、座面高38cm程度のもの」を忠実に実践しています。足を棒にして椅子を探し、テーブルは自作しました。10年以上使っていますが、実に快適です! 自分の暮らしにほんとうにふさわしいモノを問い直すとき、身度尺は最大のヒントになるはずです。
 

「入れ子」と「スタッキング」で、狭い家でも快適

入れ子

2階にしつらえたサロンに展示された入れ子の器

また、日本の生活用具の知恵である「入れ子」についても、秋岡さんはたびたび紹介しています。携帯性と収納性がよく、場所をとらないのに多彩な使い方のできる入れ子は、狭い空間に暮しながら、高い生活の質を保持するために、とても役立ちます。

入れ子と同様の考え方の「スタッキングがきく器」も、一つ分の面積で、同じサイズを複数持つための知恵として、重宝しています。


一器多用でシンプルに楽しく暮らす

サロン

サロンには、秋岡さんが好んだ生活用具や、秋岡さんの名言がカードになって展示されている

そして、これもまた日本の風土に根ざした「一器多用」という考え方。襖で仕切られた畳の部屋を、用途に応じて寝室に、ダイニングに、親族が集まる大広間にと多様に使う和室のように、一つのモノをいくつもの目的に使う。これまた、少ないモノで楽しく暮らすための大きな武器となりました。若い頃、ガイドが秋岡式を実践していたのは、「蕎麦猪口をコーヒーにも日本茶にも、小鉢としても使う」。



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