皮膚・爪・髪の病気/その他の皮膚・爪・髪の病気

子どもに多いいちご状血管腫・単純性血管腫の治療法

【小児科医が解説】血管腫は、形、大きさ、できる部位など種類が様々で、自然に消えるものと消えないものがあります。特に子どもに多いのは「いちご状血管腫」「単純性血管腫(ポートワイン血管腫)」です。原因、治療法、その他の血管腫を伴う病気について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

血管腫とは……子どもに多いのは「いちご状血管腫」「単純性血管腫」

血管腫の種類・原因・治療・予後

子どもの多くで発見される血管腫は、いちご状血管腫と単純性血管腫(ポートワイン血管腫)

血管腫はその名の通り、血管が先天的に増えてしまったものを言います。生まれてすぐに見つけられたり、どんどん増えていったり、一時期に増減したり、成長とともに増えて一定の大きさで止まってしまったりします。

血管腫は様々な病気の症状のひとつとして見られますので、病気のシグナルとして注意が必要なことがあります。しかし、子どもの多くで発見されるのは、いちご状血管腫と単純性血管腫(ポートワイン血管腫)です。
 

いちご状血管腫とは

イチゴ

イチゴの表面のような血管腫です

生まれて数日(生後1~4週)から出てきて、しばらくの間大きくなります。大きくなる場合は1年以内に急速に大きくなります。赤くて少し盛り上がり、表面が凸凹していて、見た目がいちごの表面のような形をしているので、「いちご状血管腫」と呼ばれています。1歳ぐらいまでは大きくなることがありますが、小学校になる頃には、自然に、小さくなり、色も消えていきます。多くの症例は、5~7歳までに数年間かけて赤みは少しずつ消えていきますが 、「あと」(瘢痕:はんこん)が残ることがあります。

しかし、あまりにも大きくなったり、血管腫の中で潰瘍と言って皮膚が凹んだり、まぶたにできて目をふさぐことになったら、治療が必要になります。そのため、だんだん大きくなっているようなら月に1回、あまり大きさが変わらない場合は年に1回程度の間隔で、大きさや盛り上がりをチェックしておきましょう。
 

いちご状血管腫の治療

■圧迫療法
血管腫を押さえつける方法で、包帯などができる手足で可能です。

■内服療法
β遮断薬と呼ばれる内服薬を使用することもあります。
また、ステロイド内服を行うことがあります。ただし、長期や大量のステロイドは副作用が心配になりますので、上手に使用していく必要があります。

■ドライアイス圧抵法、レーザー療法
冷却、レーザー照射によって、増えた血管を破壊する方法です。外科的に血管腫を切除する場合もあります。

血管腫に潰瘍ができている場合は、血管腫が大きい場合が多いので、血管腫の治療を行いながら、皮膚感染予防のため消毒します。

さらに、鼻や口、首などに血管腫ができて、気道や食道を圧迫して呼吸や食事(ほ乳)がしにくくなる、発達に影響する、眼や耳に近い場所などに発生して、視力、聴力に影響を及ぼす、血管腫が急激に大きくなってきている、出血しやすい、ただれやすい、「あと」が残りやすいなどのことがあれば、積極的な治療が望まれます。
 

いちご状血管腫の予後

血管腫が消えても、皮膚のたるみやしわが残ることがあるので、その場合は形成手術を行うことがあります。そのため、目につく場所であったり、場所によっては早期に治療をすることがあります。
 

血管腫から出血した場合

血管腫からの出血は、止まりにくいので、出血した部分にガーゼなどで圧迫し、すぐにガーゼを取らずに、数時間は患部を押さえておきましょう。それでも出血が止まらない場合は、外科的な処置が必要です。
 

単純性血管腫(ポートワイン血管腫)とは

サーモンパッチ

額にできる淡い色の血管腫は消えることがあります

盛り上がりがなく、平坦な血管腫で、「赤あざ」「ポートワインステイン」「ポートワイン血管腫」などと呼ばれることがあります。生まれた時からありますが、残念ながら自然に消える可能性は低いです。大きさはほとんど変わらないか、成長とともに大きくなるかです。治療は、外観を気にするかどうかで決めることになります。

例外として、額やまぶたにできる淡い赤色の単純性血管腫は「サーモンパッチ」と言い、短期間で自然に消失することがあります。大体、生後1年半以内に大部分は自然消退し、治療を行う必要はありません。しかし、うなじに生じた血管腫はウンナ母斑と呼ばれ、その半数は消失しません。
 

単純性血管の治療

機能的には問題がありませんので、見た目で治療すべきどうかが判断されます。顔面や頭部に生じたものは成人になると盛り上がってくることがあるので、盛り上がる前に治療が望まれます。
治療を選択した場合、レーザー照射による治療が最初に行われます。

■レーザー治療
レーザーの種類として色素レーザーが使われます。血管腫の大きさ、場所、色の濃さによってレーザーの回数などが異なります。

レーザー照射中はじっとしないといけませんので、子どもの場合は、全身麻酔になることもあります。そのため、局所麻酔でじっとできる年齢まで様子を見ることも1つの方法です。

レーザー治療は、一般に顔面、頚部では70~80%の有効率ですが、四肢、特に下肢に生じたものは治療効果が悪いことがあります。レーザー治療の効果の悪い場合では外科手術になります。

■外科手術
手術の傷などの問題もあるので、血管腫の大きさ、色、場所などで判断した方がいいでしょう。
 

血管腫を伴う病気

まれですが、血管腫を伴う病気を参考までに挙げておきます。

■Kasabach-Merritt症候群
血管腫が大きく、そのために、血管腫の中で、血栓を作ってしまい、血小板が減り、血を固める糊のようなタンパク質であるフィブリノーゲンが減ってしまい、血が止まらなくなる病気です。

■Osler病
顔や手の指、口の中、鼻の中に、点から大豆大の小さな血管である毛細血管が広がったり、小さな血管腫が多く出現する病気です。

■Sturge-Weber症候群
顔の目から頬にかけて拡がる赤い血管腫(単純性血管腫)と脳への血管の異常もあり、痙攣、精神発達の遅れ、片方の手足の麻痺が起こります。

■Klippel-Trenaunasy-Weber症候群
手足、特に足に広い範囲の血管腫があって、血管腫の足が太くなっています。

血管腫は、病気の中のひとつの症状として出ていることもあるので、血管腫が大きい場合は皮膚科・形成外科を受診しましょう。

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