高台の家のメリットとデメリット
東日本大震災の津波被害によって高台の住宅地が改めて注目されているようですが、それ以前から都市部の高台は人気を集めています。眺望がよく、風通しや日照にも恵まれ、繁華街から離れることで喧騒のない静かな住宅地を形成している場合もあるでしょう。ただし、鉄道駅や商業施設、道路網などはまわりよりも低い平坦地で発達することが多く、利便性を優先するなら低地、居住環境を優先するなら高台といった選択にならざるを得ないエリアも少なくありません。
高台の家からの眺望とメリット
高台の平坦地における開発分譲地など、一帯が第1種低層住居専用地域に指定されているところであれば、まわりを見渡しても高いビルやマンションがなく、毎日の生活のなかで広い空を感じることもできます。
山あいに発展した都市では斜面に沿って家々が立ち並んでいることもありますが、それが南向きの傾斜であれば、どの家も日照を遮られる心配がありません。
さらに海沿いの高台では、家の窓から海や港を見下ろすことができ、毎日の生活に潤いや、ゆったりとした雰囲気を与えてくれることもあるでしょう。
高台は地盤が安定しているものの、住宅地には適していない?
ところで、高台は地盤が比較的安定しているとはいえ、本来であれば住宅地として適しているのは崖から一定距離をおいた平坦部分です。高台の周縁部の崖付近では地盤の安全性に問題があることも少なくありません。人間が住む以前の長い土地の歴史でみれば、繰り返し起きた崖崩れで残った部分が現在の高台になっているケースも多いでしょう。
下の写真は根岸(横浜市)にある米軍住宅ですが、緩やかな斜面部分は芝生で覆われ、崖からほどよく離れた位置に大きな家が建てられています。
ところが、日本の土地事情ではなかなかそうすることもできず、崖ぎりぎりにまで家が建てられているケースが少なくありません。他の家に眺望を遮られないためには、崖に面した敷地にするしかないといった側面もあるでしょう。
さらに、都市部の住宅事情を反映してか、人工地盤によって崖からせり出すように建てられた家も見受けられます。
本来であれば自然のまま残すべき住宅地の裏山や小さな丘が切り崩され、宅地として開発されたところも多いでしょう。
高台の家は「急傾斜地崩壊危険区域」に指定された住宅地も
その一方で、自治体から「急傾斜地崩壊危険区域」に指定された住宅地も、全国のいたるところに存在しています。それぞれ安全上の対策を講じたうえで家が建てられているとしても、地盤の危険性と隣り合わせであることに変わりはありません。ちなみに、少し古いデータになりますが、国土交通省の調査によれば人家のある「急傾斜地崩壊危険箇所」は全国で約29万(2003年)に達し、危険区域内に居住する約440万人が保全されていない(1997年度末時点)といった状況のようです。
「急傾斜地崩壊危険区域」に指定されている場合も、そうでない場合も、崖に面したような土地や住宅を購入するときには、その安全性に十分な注意を払い、専門家に依頼するなどして何らかの異常や問題がないか事前にしっかりと調べてもらうことを検討しましょう。
高台の家を購入するときは日常の生活圏について調べることが必要
また、地盤の問題だけではなく、高台の家を購入するときには日常の生活圏についてもよく調べることが必要です。通勤通学で歩く駅までの道のり、あるいはスーパーやコンビニへ行くときなど、そのたびに長い階段を上り下りしなければならないケースもあります。整備された階段があればまだよいほうで、近道として使えるのが未舗装の細い小道だけ、雨や雪が降ったら歩けない、といったケースもあるでしょう。
直線距離ならほんの数十メートル先の駅やスーパーへ行くのに、ぐるっと回って10分以上歩かなければならないような場合もあります。
マンションでは、エントランスへ向かう途中の地盤下に住民専用(近隣住民利用可)のトンネルやエレベーターを設けた例もありますが、一戸建ての住宅地ではなかなかそうもいきません。
高台の土地や住宅を購入するときには、事前に自分の足で歩いて日常生活圏における道路の状況などをよく確かめることも大切です。
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